• テキストサイズ

Change the world【ツイステ】

第3章 気分屋フィクル!【フロイド】




ヒカルの体重はヒミツだが、平均から考えてそう軽いわけでもない。
かといって重いわけでもないと信じたいけれど、そこらへんの荷物と比べたら遥かに重い。

しかしフロイドときたら、まるで犬か猫を抱くような所作でヒカルを抱き上げた。
苦しまず、力まず、ふらつきもせず、ヒカル本人に「わたしはとんでもなく軽いのかも」と思わせるほど。

そんなわけはない。
ただ単に、フロイドが馬鹿力なだけだ。

乙女ならば誰もが胸をときめかせるワンシーン。
ヒカルだって、こんなシチュエーションに憧れていなかったわけではない。

だが、現実はあまりにシビアだ。

(ひぇ……、高い! 怖い!)

自分の身長よりも少し高い位置で持ち上げられたヒカルは、普段よりも高くなった目線と、地に足つけない状態に怯えた。

なぜお姫様抱っこ……と思わなくもなかったが、フロイドに理由を尋ねるだけ無駄だろう。

ならば早くミッションを済ませてしまおうと彼の頭に手を伸ばしたら、いやいやと首を振られる。

「ダメダメ、ちょっと待って。」

「え、なんで? 撫でてほしかったんじゃなかったの?」

「うん。でも、ここじゃダメ。」

じゃあどこで?と質問をする前にフロイドが歩き出し、不安定な乗り物に臆したヒカルは、思わず彼の首に抱きついた。

「あ、それもいーかも。首に抱きつかれるって、斬新。」

「それを言うなら、わたしは全部斬新だよ!」

新鮮ではなく、斬新。
フロイドのしでかすことは、すべてにおいて斬新だ。

どこへ連れていかれるのかと訝しんでいたら、こつこつと靴の踵を響かせて向かった先は、フロイドが掃除したばかりの空き部屋。

ドアを蹴破り、蝶番が悲鳴を上げた。
なにをするんだと驚いたのも束の間、荒々しく雑な足癖とは打って変わって、壊れ物を扱うようにベッドへ下ろされる。

長年使われていないはずのベッドは浄化魔法のおかげで埃ひとつ吐き出さず、ぎしりと軋みながらヒカルの身体を受け止めた。



/ 426ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp