第3章 気分屋フィクル!【フロイド】
活きが悪く、テンションだだ下がりのヒカルなんておもしろくもなんともないだろう。
しかし、フロイドはヒカルの頭に頬を寄せたまま、軽い調子で考える。
「うーん、でもぉ、無駄なわけなくね?」
「……どうして?」
「だって、誰でもオレみたいに魔法使えるわけじゃないし。浄化魔法、あんまり連発できるヤツいねぇよ? オレはねー、すぐ制服汚れたりするから、早めに習得したんだぁ。ムカつくヤツの血とかつけたまま、歩きたくねぇじゃん?」
せっかくいいセリフを言っているようなので、後半部分は聞かなかったことにしてしまってもいいだろうか。
魔法は便利だけど、無限に使えるわけではない。
新しい魔法をひとつ覚えるのにも努力が必要で、フロイドのようにポンポン使えるような天才は稀。
「それに、オレも楽勝ってわけじゃねぇし。いっぱい魔法使ったから、すんげー疲れた。あと少し頑張ったら、オーバーブロットしちゃいそう。」
「オ……、ブ……ッ!?」
物騒な発言に、ぎょっと目を剥いてフロイドを見上げた。
いきなり顔を上げたものだから、ヒカルの頭部に乗せていたフロイドの顎をごちりと頭突く。
「いって、ヒカルちゃんひどー。」
「ご、ごめん。……じゃなくて、オーバーブロットって……!」
魔法を使うとブロットと呼ばれる不純物が排出され、許容量を超えてしまうとオーバーブロット……いわゆる闇堕ちバーサーカー化してしまう。
本編ストーリーでは各ボスがオーバーブロット化し、負のエネルギーが凶悪なモンスターに姿を変えて、破壊の限りを尽くす。
フロイドは本編のボスではないため、ストーリー上でオーバーブロットした描写はない。
しかし、魔法士である以上、誰でも闇堕ちする可能性は秘めていて、それはフロイドも同じ。
(いやいや、待ってよ! 今ここでオーバーブロットしたら、わたしは絶対無事では済まないじゃん!)
恐ろしいウツボのモンスターを想像し、冗談ではなく青ざめた。