第3章 気分屋フィクル!【フロイド】
もしかしたら、キスを拒絶したらフロイドは怒るかと思った。
自分がしようとしたことを邪魔されると、機嫌を損ねるタイプだから。
しかし、ヒカルの予想を裏切って、フロイドはあっさりと引く。
「えー、そうなの? わかった、オレも縛られんの好きじゃねぇし。」
ちくり、と胸に小さな痛みを覚えた。
それは本当に些細な痛みで、ヒカルでさえ気がつかないほどの。
「どうしたの、ヒカルちゃん。変な顔して。」
「変な顔……?」
「うん。なんかぁ、オレにいじめてほしそうな顔!」
どんな顔だ、それ。
ヒカルに隠れたM要素はない。
違うと言ってもフロイドを喜ばせそうだし、そうだと言っても喜ばせてしまいそう。
「よしよし。いーっぱい、いじめてあげるね?」
結局、ヒカルがなにも言わなくても勝手に喜んだ。
クロッチを押し退けて直に触れたフロイドの指を、潤い始めたヒカルの花芯が喜んで迎えたので、もうなにも言えなくなった。
(こんなふうに感じちゃうなら、フロイドのことをとやかく言えないよ……。)
冷たい机の感触を背中に感じながら、あさましくも快楽を欲する己の身体を嫌悪する。
心と身体は別物と言うけれど、本当にそのとおりで、指を挿入された蜜路はフロイドを歓迎してきゅうきゅう締めた。
「すっげ、ヒカルちゃんのここ、オレの指がおいしいって食いついてくるよ? ねえ、きもちい?」
「……ッ」
無自覚に言葉責めをしてくるフロイドに、ヒカルは唇をきゅっと噛んだ。
長く柔らかいフロイドの指は、ヒカルの中で不思議な生き物のようにうねって暴れる。
指をすべて飲み込んで、入口に付け根の硬さを感じた時、フロイドが困ったような、悔しいような声を出した。
「うーん、もうちょっとなんだけどなぁ。」
「ん、なに…が……。」
「ヒカルちゃんが感じちゃうところ、もうちょっとで届く。ほら、ここ!」
限界まで飲み込んだはずの指をぐっと押され、ほんの少し奥の壁を引っ掻かれると、全身を戦慄かせるほどの快楽が押し寄せた。