第3章 気分屋フィクル!【フロイド】
人は誰しも、快楽に弱い。
昂っていく熱を弾けさせたら、どれだけ楽だろうと思う。
けれど、好きでもない男に身体を弄られ、こうもあっさり感じてしまうとは、この世界に来るまで知らなかった事実。
「ヒカルちゃんってば、強情~。じゃあ、オレが素直にさせたげよっか?」
「え……? あ、ちょっと……!」
なにをするかと思いきや、突然フロイドの手がズボンの中に突っ込まれた。
脱がしもせず、ズボンの中で手さぐりに股間をまさぐって、下着の上から秘部をなぞった。
割れ目部分を指で辿られ、動揺と焦りで息を吸う音がひゅっと鳴る。
「ほらやっぱり、濡れてんじゃーん。」
「ぅ……ッ」
指摘されなくても、とっくに気づいていたこと。
好きでもない男に愛撫され、感じて蜜を垂らすヒカルは、フロイドと同じく立派な変態だ。
「恥ずかしがらなくてもいーよ? ね、一緒に気持ちよくなろうね?」
そんなふうに優しく囁かれたら、心が揺れた。
わかっている。
フロイドはただ、自分が気持ちよくなりたいだけ。
ヒカルのことなんか可愛いとも好きとも思っていないし、今だけ夢中になっているオモチャ。
使い捨てられるだけだと理解していながら、それでもヒカルの身体はフロイドを欲している。
昨夜のように嫌だ嫌だと喚くこともできず、秘部をなぞるフロイドを容認してしまう。
ヒカルの心変わりを正確に見抜いたフロイドは、うっとりと甘い笑みを浮かべながら、顔を近づけ、唇を寄せ、そして……。
「ダメ……。」
すんでのところで、フロイドを止めた。
自分とフロイドの唇の合間に手のひらを差し込み、首を振る。
「キスは、ダメ。それは、恋人とするものだから。」
今さら、なにを言っているのだろう。
すでにキス以上のことをしてしまっているというのに、こんなことをしても無意味。
でも、最後の砦として、薄っぺらな壁を残しておきたい。
自分たちは恋人ではない、これはただの遊びだという証明を。