第3章 気分屋フィクル!【フロイド】
傷ついたようにしょんぼりされると、まるでヒカルが苛めたような錯覚を抱くが、断じて違う。
追いつめられ、虐められているのはヒカルの方。
「ひっでー、ヒカルちゃん忘れちゃったの? 次はおっぱい触らせてくれるって約束したじゃん。」
「んな……ッ!?」
「あ、ほんとに忘れてたんだ? ひっでーなぁ、オレ、ちょー楽しみにしてたのに。」
「待ってよ、わたしそんな約束してない!」
昨夜の行為中、フロイドが胸に触りたがっていたのは覚えている。
今度触らせてね?とかなんとか言っていたが、ヒカルは一度だってそれを了承していない。
第一、フロイドが言う“今度”なんか、永遠に来るはずがなかったのに。
「ヒカルちゃんってば、往生際わるーい。でもいいよ、許してあげる。特別だからね? 他のヤツだったらとっくに……絞め殺してる。」
最後の一言だけひやりと冷たく言い放ち、フロイドの目がぎらりと光った。
ヒカルが息を呑んだのも一瞬のことで、すぐにへらっと笑ったフロイドは、ヒカルの背中に腕を回して緩く抱いた。
「だいじょーぶ、ヒカルちゃんは絞めたりしねぇから。だって、オレの大事なヒカルちゃんだしー。」
大事なヒカルちゃん。
それだけ聞けば愛ある発言に思えるけれど、実質は「大事なオモチャ」と言われているに等しい。
気分屋のフロイドは、ヒカルという名のオモチャに夢中。
だけど、飽きたらすぐにゴミ箱行きだ。
「だからヒカルちゃん、オレと楽しいコト、しよ?」
「……いや。」
ヒカルが断るのは、せめてもの抵抗だ。
例え、獰猛な肉食生物の餌食になる未来が変わらないとしても、そこに拒絶の意思があるのだと示しておきたい。
作業着の第二、第三ボタンが外されても、地肌の上を大きな手のひらが這いずっても、ヒカルは諦めなかった。
どうせすぐ飽きる。
ユウが不在になった、三日間だけの戯れだ。