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Change the world【ツイステ】

第3章 気分屋フィクル!【フロイド】




フロイドに連れてこられた場所は、校舎の端にある教室。

「はい、ヒカルちゃん。どーぞ!」

「あ、ありがとう。」

「ううん、レディファーストだもんね?」

扉を開けたフロイドに促され、ヒカルは教室の中に入る。
こう言っちゃなんだが、フロイドにレディファーストができるとは思わなかった。

やろうと思えば常識人らしい真似もできるじゃないか、と見直したのはほんの数秒間だけ。
がらんと静まり返った教室を見て、足を止めた。

そういえば、この教室は空き教室だったはず。

「ねえ、本当にユウがここに――」


――ガチャッ


振り向きざま、なにかが閉まる音がして、フロイドの手元を見た。

閉まったものが扉なら、それほど気にはしなかっただろう。
けれど、フロイドが閉めたのは扉だけでなく、そこについた鍵。

「……鍵、なんで閉めるの?」

とてつもなく、嫌な予感がする。
尋ねてはいけないような気がしたけれど、どうせ聞いても聞かなくても結果は同じだ。

「あはッ」と笑ったフロイドの口から、ギザギザの歯がちらりと覗く。
数々の獲物を絞め上げ、食らいついてきた強者の歯。

「だってぇ、誰かが入ってきたら困るじゃん? ヒカルちゃん、他のヤツに見られるの嫌なんでしょー?」

「は……、なに言って……。」

見られて困るようなことを、フロイドとするつもりはない。
するつもりはないのに、心の中で“逃げられない”と思っている自分がいる。

「ヒカルちゃん、自分が今、どういう顔してるかわかる?」

手を伸ばせば触れられるほどの距離まで寄ってきたフロイドの頬が、じんわりと紅潮してきた。
興奮を直に伝える色に、ごくりと固唾を呑む。

「ねえ、その顔、ちょーそそるよ。」

「ひ……ッ」

べろりと頬を舐められて、喉の奥から悲鳴が漏れる。

けれどそんな反応もフロイドを興奮させる種にしかならず、興奮を湛えた視線がねっとりとヒカルに絡みついた。

「可愛い、可愛いね、ヒカルちゃん。ね、オレと遊ぼう?」

「あ、遊ばないよ。わたし、仕事中なの!」

「いいじゃんそんなの。それにほら、約束したじゃん?」

フロイドと遊ぶ約束などした覚えはない。
首を左右に振って否定すると、フロイドの眉がしゅんと下がった。



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