第3章 気分屋フィクル!【フロイド】
フロイドの優しさを諦めたヒカルは、とにかく彼の雄を無事に受け入れることに徹した。
もちろん、フロイド自身を受け入れたわけじゃない。
でも、今さらヒカルがなにを言ったところで彼の気が変わるとは思えないし、それこそ気が変わって無理やり突っ込まれたらヒカルは死ぬ。
息を深く吐きながら痛みを散らし、なるべく下肢に力を入れないように努める。
張り上がった切っ先さえ入れば、あとはなんとか収まるはずだ。
ヒカルの努力の甲斐あって、突き立てられた楔がじわじわと中に入り込んでくる。
決してフロイドの微々たる優しさのおかげではない、ヒカルの努力だ。
当のフロイドには伝わりようもないけれど。
「ん、なんかちょっと入ってきた。ねえ、オレすごくない?」
ちっとも、なんにもすごくなんかない。
理不尽な怒りが沸々と湧いてきたけれど、今は力を抜くことに意識を集中したくて無視を決め込む。
ようやく最難関を乗り越えたというところで、不意にフロイドがヒカルの腰を強く掴んだ。
「なーんか、つまんない。ねえ、もっと声出してよ。」
そう言ったフロイドは、あろうことか先端が入ったばかりの蜜壺に、己の屹立を一気に突き入れた。
「うぁッ、くぅ……ッ」
ごつんと内臓を押し上げられ、圧迫感に喘ぐ。
串刺しにする、なんてよく言うけれど、まさしくそんな気分だった。
「あー、見て見てぇ! 全部入ったよ、ほらぁ!」
見えるわけがない。
無邪気さもここまでくると災害だ。
災害レベルのモンスターは、ソファーに顔を埋めて息を乱すヒカルに後ろから寄り添い、甘く低く囁いた。
「ねえ、これ、キモチイイよ? 小エビちゃん頑張ったね、えらーい。」
べろりと耳を舐められて、ソファーの張り布を掴んだヒカルの手が震えた。
「小…エビ……、呼ばない…で……ッ」
こんな時でさえ気になるのはそこで、息も絶え絶えになりながら嫌がった。
「えー、なんでぇ? うーん、しょうがないなぁ。じゃあヒカルちゃんでいいよ。オレ、あんまり名前で呼ばないけど、特別だからね?」
ジェイドとアズール以外の者を、彼は名前で呼ばない。
なんだかフロイドの内側に入ってしまったような気がして危うさを感じたが、もはや気にする余裕もなかった。