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ステラ

第3章 出会い



まっすぐに見つめられ、間違いなく私に向けて言われているのだと確信した。
今まで、誰かと食卓を囲むことなど許されなかったのだ。
あの伯爵家では。

「ここはお前の家ではない」

ドキリとした。
心が読まれたのかと思うほどだった。

「ここでは客人だ。くだらんことは忘れろ」

なになに?と聞いているクルトさんを見るかぎり、じっと私を見つめて話すジェラードさんには本当に心がみられている気がした。

「はい。……失礼します」

深々とお辞儀をして、空いている椅子に座る。
マナーなど知らない私は何か粗相をしてしまうのではないかと、初めて見るようなおいしそうな料理を目の前にしても緊張が解けることはなかった。
それどころか、手が少し震える。

「くだらんことは考えるな」

もう一度ジェラードさんに言われる。

「んー。なんかよくわからないけど、食事はおいしく食べれば正解だよ」

にっこりと笑いながらクルトさんは私の分の料理を取り分けてくれた。
そして、ジェラードもきっとそういうことが言いたいんだと思うよ。と苦笑いする。

顔や言葉にはあまり現れないが、ジェラードさんも優しいのかもしれない。

そう思いジェラードさんにお礼を言うと「あぁ」とだけ言って黙々と食べ始める。
クルトさんが「もっと愛想よくしろよ」と深々とため息をついたあと料理を口にし、「おいしい」と花を咲かせる。

二人の動きを見つつ、慣れない手つきで私も一口食べてみた。

「……!!おいしい……」

「ふふふ。ジェラードの料理、おいしいんだよね~」

クルトさんが自慢げに話す中、ジェラードさんは何も言わずに食事を続ける。
自慢したくなるのもわかる。一口だけで、まるで頬が落ちるかと思うくらいだった。

それからは夢中で食べた。
今までの空腹を埋めるように。

最初は少し驚いた様子のクルトさんだったが、すぐに目を細め食べ始めた。

あっという間に食事を終えると、クルトさんが聞く。

「どう?おいしかった??」

「はい!」

私の答えを聞き、明るい笑顔を咲かせたクルトさんは安心したように「やっと笑った」とつぶやいた。
続けてクルトさんが口を開く。

「聞きそびれちゃったんだけど、君、名前は?」

「あ。すみません。私はステラ=スペラードです」

ガチャン

私が名前を伝えた直後、ジェラードさんが持っていた食器を落とした。
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