第3章 出会い
それからどのくらい眠っただろう。
「ひどく熱が出ていたんだ。これを飲め」
目が覚めるなり、ジェラードさんに温かい飲み物を手渡された。
マグカップをのぞき込むと、何やら緑のような黒のような色の液体が……。
飲むのを躊躇っていると「早く飲め」と急かされ逃げ場がなくなった私は、覚悟を決めて一気に飲み干した。
「……!」
に……苦い……。
「おいしい」という言葉など少しも浮かばないその液体は、苦すぎてしょうがなかった。
下がびりびりするし、今にも”戻してしまいそう”だった。
それはまずいと思い、パッと口元を抑えるとジェラードさんが聞く。
「どうした」
「い、いえ……。何でもありません……」
自分でもわかるくらい声が震えた。
別にジェラードさんが怖いわけではない。
この震えはすべて、さっき飲み干した液体のせいだ。
「平気か」
「はい。平気……です」
必死にうなずく。
それまで私のことを凝視していた彼は「来い」とだけ言うと階段に向かう。
そして階段の手前で振り返り、じっと私がそこに来るのを待っている。
……これは早くいかなければ。
慌てて床に足を下し、ジェラードさんの待つところへ歩き出した身体は不思議に思うくらい軽かった。
1階に降りると、クルトさんが心配そうに駆け寄ってきた。
「熱があったこと、気づけなくてごめんね?
無理させたよね……。もう大丈夫そう??」
少し垂れ気味の彼の眉毛がさらに下がっている。
きっと、ずっと心配してくれていたのだろう。
「薬を飲ませたから大丈夫だ」
キッチンがあると思われる場所から皿を運びながらジェラードさんがそう言うと、クルトさんは口をあんぐりと開け、サーっと青ざめた。
「この子にあんなもの飲ませたの!?」
”あんなもの”という表現に納得する味だった気がする。
苦かったでしょう。可哀そうに…。と、ウルウルした目で私を見つめるクルトさん。……なんだか犬みたいに見えてしまった。
心配されるのは、なんだか照れ臭く感じた。
「あれ良く効くんだけど、苦すぎて僕は飲めないよ……」
クルトさんが追加情報を話している間にジェラードさんは食事の用意を終え、座るよう促す。
はいはーい!と座るクルトさんに対して、私はその場から動けないでいた。
「……何をしている。お前もだ」