第4章 暮らし
クルトさんの視線に合わせて目をジェラードさんの背中側に向けると、彼の背中のほうにはだいぶ面積が余っているように見えた。
それはもう、大人一人寝るのなんて全然余裕なくらいに。
「んもぅ。ジェラードだけずるい。僕もステラちゃんと寝たい~」
ジェラードさんは「早く戻って大人しく寝ろ」と言っていたが、クルトさんは諦めず、挙句の果てには無理やりその体を潜り込ませてきた。
「……なんで俺がお前の隣で寝なくてはいけないんだ」
「え~。ジェラードが真ん中から動かないからでしょ~。僕も別に、ジェラードと一緒に寝たいわけじゃないから。ステラちゃんがメインだから」
ひと際気合を込めてそういうとパチンと指を鳴らす音がして、ハッとしたときにはすでに私は二人の真ん中で横になっていた。
「ふふ~。これでオッケー。おやすみ~」
ぎゅーっとクルトさんに包まれる。
ジェラードさんのいるほうから小さく舌打ちが聞こえたがクルトさんは気にしていないようだ。
「あ、あの…。さっきからなんだか不思議なことが起こっているように感じるんですけど……」
「はいはーい。今は寝ましょうね~」
にっこりと微笑んで、私の額から目にかけてクルトさんの手のひらがかざされた。
それを見てから強い眠気が襲い、聞きたいことがあったのに私は眠ってしまった。
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「……う……。………うぅ…めん……ごめん…なさ……」
「……おいクルト。術が甘いぞ」
「あれ……本当だ。うーん…。やっぱ僕だと眠らせることしかできないかぁ……」
「はぁ。できないなら最初からするな」
「だって……。ステラちゃん寝るときずっとうなされてたからさ……。僕らがいるときくらいは……」
「……。”お前は”やらなければいいんだ」
「……!うん。そうだね。お願い」
「………」
「う……。……すー……すー……」
「わぁ。さすがだね」
「俺にとっては大したことではない」
「ふふふ。ジェラード、実は今までもステラちゃんにかけてあげてたでしょう」
「何のことだ」
「夜な夜な二階に上がっていくの、気づいてたんだ」
「………。寝ろ」
「ふふ。はぁい」
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