第3章 出会い
ベッドに私が座り、その向かい側に赤髪。
私の視線から少しずれたところに黒髪が座った。
コホン。と咳払いをして、赤髪が話し始める。
「急にごめんね?僕はクルト。クルト=アーロイス。
さっきは本当、悪気はなかったんだ。許してくれる?」
頭をぶつけたのは私のほうなのに、なぜ謝ってくれるんだろう。
優しい赤色の髪。ゆるくパーマがかったような毛質が、この人の性格を表しているようだった。
「許すだなんてそんな。私こそすみませんでした。
寝たふりなんてしてしまって………」
いきなりここにいたらそれはフリもしちゃうよね。と軽く笑うクルトさん。
いい人そうだなと胸をなでおろしたのもつかの間。
「ジェラードだ」
クルトさんの横からそう一言。
ちらりと目をやると、睨まれている。
……私、何かしてしまったのかな。
ジェラードと名乗るその人の視線にビクビクしていると、クルトさんが大きく口を開いた。
「あー!えっと…。こっちはジェラード=ルイ=エイデン。
ジェラード。お前はもう少し笑顔を覚えなよ」
少し呆れたように笑うクルトさんを見て、二人は仲がいいのだとわかった。
そして、別に睨まれているわけではないのだということも。
「さて。君の名前は?」
「あ…。私の名前……は…あれ……」
自分の名前を伝えようとした時に頭がグラグラ揺れる。
さっきぶつけたせいだろうか。
だとしたら彼も相当ダメージを受けているに違いない。
彼は大丈夫なのか。
確認しようと目線を上げるが、目の前はまるで溶けた飴玉のようだった。
ぐにゃぐにゃでカラフルで揺れていた。
大丈夫かと必死で叫ぶクルトさんの後ろで、ただ黙って私を見つめるジェラードさん一度目が合ったのを最後に、私はもう一度暗闇の中に旅立った。