第3章 出会い
「あたたかい………?」
目が覚めた時、目を閉じたときとは全く逆の温度を感じた。
自分の部屋でも、空でもない。知らない天井が見えた。
自分が横になっているベッドは、私にはあまりにも大きく、そして何よりも、柔らかく、温かかった。
身体が熱い。頭がぼーっとする。
起き上がろうにも力が入らない。
何とかして体を起こそうとベッドの中でもがいていると声がした。
「ねぇ。起きたんじゃない?」
「ねぇねぇ。様子を見に行ってみようか」
「ねぇってば。行かないの?」
「……もう。じゃあ僕だけで見に行ってくるね」
だ、誰か来る!
足音が階段を上ってくる。
なんとなく、気まずかったので咄嗟に目を瞑った。
足音は私のすぐ近くで止まると、喋りだした。
「あれ?まだ寝てる…。起きた気がしたんだけどなぁ」
お願い。どうかそのまま去って。
今顔を合わせるにはまだ心の準備が足りない……!
「……なーんて。実は起きてるの、知ってるよ?」
え……。
一気に冷や汗をかく。
ど、どうしよう。本当にばれているのなら寝たふりを続けるのは……。
「まぁ。そんなわけな「すみません!!!!!」
「いったあああああ!!!」
謝罪とともに、渾身の力を込めて上半身を起こすと頭が何かにぶつかった。
………嫌な予感がした。
ゆっくりと目を開けるとそこには誰もいない。
……ように見えていたが、おでこを両手で押さえながらうずくまる人がいた。
とんでもないことをしてしまったと思い、ひたすらに謝罪を続けると、赤い髪の毛を指でちょいちょいと整えながら私を制止したかと思えば、
「その様子だと元気みたいだね。よかった」
瞳を細くさせ、そう言ったのである。
身体が一気に熱くなった。
「よかった」なんて、今まで言われたことなどなかった。
もう大丈夫です。と言いかけたとき、赤髪の青年がやってきた階段からまた別の声がした。
「元気なわけがない」
それだけ聞こえると目の前が青白い光に一瞬包まれた。
突然の出来事に目を閉じ、次に目を開けたときには黒髪の青年が立っていた。
「これのどこが元気だというのだ」
青白い光とともに現れた黒髪の青年は、深くも鮮やかな紫の瞳で私をじっと見下ろす。
こ……こわい。
手がカタカタと震えだした私に気づいたのか、赤髪の青年が私と黒髪の青年との距離を離す。