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暁の契りと桃色の在り処 ー紅ー

第17章 虹色の誓い


『なんだ。』

信長が、くいっと酒を飲み、空の盃を持ったまま膝にのせる。
あさひがゆっくりと立ち上がり、信長の隣に座る。

『ふん、安心しろ。あさひ。戦事ではない。』

ふぅ、とあさひが息をはく。

『休戦協定を破棄する。』

ガタッ!

織田軍が刀の柄に手を当て張り詰めた空気が流れる。

『どういうことだ?』

顔色を変えずに信長が謙信を見据える。

あさひは、ふっと殺気立つ織田軍を見つめにこやかに頷いた。

「きっと、大丈夫。座って。」

鶴の簪の六色の飾り玉が、虹色に輝く。

少しだけ雰囲気が和らぐ。

『あさひ、お前は俺の心を読んでいるのか?
休戦協定を破棄すると言ったのだぞ?』

「なにか、お考えがあるのでしょう?」

『ふははは!』

『信玄。何がおかしい。』

『謙信、あさひはお前が刀を抜かぬ事、わかっているようだぞ?
さすが敵味方関係なく、愛される天女。』

ふん。と謙信が盃を空にする。

『協定を破棄してどうするのだ?』

信長が口を開く。

『友好国として付き合う。』

『え、友好国?』

『同盟ではない。主従の上下は関係なく、同じ立場で国を考え豊かにしたい。
あさひが正室になれば、戦が嫌いな姫が安土にいると言うこと。
あさひの涙は不要。
民のために、戦より知恵を使い世を動かしてみてもよい。』

『軍神が、よくぞ言ったな。』

『ただし!
あさひを泣かせたり、孤独にさせたその時は、必ずやお前を討つ。』

『肝に命じておこう。』

ふぅーっと武将達が座り込む。

「ねぇ、大丈夫って言ったでしょ。」

『それ、勘?』

『でも信じちまった。』

「謙信様も信玄様も、穏やかじゃなきゃ宴になんて来ないもん!」

『あさひさんて、すごいな。全てお見通しだ。』

『佐助。友好の話、お前の入れ知恵か?』

『光秀さん。いや、まぁちょっとだけ。』

『まぁ、よくやった。これで諸国がどうなるか見物だな。』

『だからって、あさひの部屋に忍び込むのは別だからな!』

『出た、秀吉兄貴。』

『からかうな!』

「祝言、来てくださいね。」

『あぁ。』

あさひは信長、謙信、信玄に酌をして微笑んだ。

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