第16章 華と風の宴
『あさひ、起きろ。朝げだぞ。』
昨夜の宴とその後の信長との時間で、ぐっすと眠っているあさひの頬に口付けをし頭を撫でる。
「あ、はい…。」
あさひは寝ぼけながら、ゆっくりと褥を出ようとした。しかし、自分が何も纏っていないことに気付き、急いで褥に戻る。
「あ、あのっ、信長様…。」
『なんだ?早く食え。今日は上杉達が来る日だぞ。政宗が宴の料理の支度で忙しいと話し、簡単な握り飯だ。』
もぐもぐと頬張りながら、あさひを誘う。
「着物が…」
『…着物?どうしたのだ?』
にやりと笑いながら、また一口握り飯を頬張る。
(知ってて言ってる!)
「もういいです!」
あさひは、布団を被りながらのそのそと着物まで進み、ようやく着替え始めた。
※※※※※
「出掛けるのですか?」
信長より一回り小さい握り飯を食べながら、あさひ
は不思議そうに尋ねた。
『そうだ。上杉達はこの城には来ない。』
「じゃあ、宴は?」
『別の場所だ。政宗と秀吉、三成が先に行って準備をしている。』
「へぇ。そうなんですか。」
『あさひ、今日はお前の為に上杉達を呼んだが…
俺の目の届く場所にいろよ。』
「はい、わかりました。仲良くなさってくださいね。」
『あやつ次第だ。』
ふふっと笑い、あさひは最後の一口を頬張った。
『食べたら支度をするのだろう。今日は馬で行く。』
「わかりました。」
あさひはゆっくり立ち上がり、天守からの景色を眺めた。
空は真っ青で雲ひとつ無い。
風も柔らかで、今日一日も穏やかである事がわかった。
あさひは、深呼吸をしてから、朝げの膳を持ち支度のために自室へ戻った。