第15章 夢の始まり
宴ですっかりいい気分になったあさひを、信長は天守へ連れていった。
月明かりが照らす天守のから入る夜風が、火照った体を優しく包む。
「宴、ありがとうございました。お姫様みたいになれて、楽しかったし幸せでした。」
『貴様は、安土の姫なのだぞ。』
「ふふっ。はい、そうですね。」
『おい、あさひ。この世に来て後悔はないのか?』
「え?」
『この世で生きていくことに後悔はないのか?』
「…あったら、どうします?」
『それでも離しはせぬが、貴様の笑顔が曇るのが怖い。』
「秀吉さんの心配性がうつりましたか?」
『なっ!』
ふぅ、と息を吐いてあさひはにこやかに笑った。
「後悔はありません。
…寂しさはありますが、今日皆が私の場所を守って私を必要としてくれるとわかりましたから。」
そういう、あさひを月明かりが妖艶に照らす。
信長は、あさひを勢いよく引き寄せ褥に連れていった。
『俺を酔わせるのはお前だけだ。』
深く口付けをする。まだ足りないと、求め合う。
熱く、甘く、深く…
二人は溶け合うように抱き締め愛しあった。