第15章 夢の始まり
(一緒に城下で見た帯紐に、それに合う帯まで。覚えていてくれたんだ。)
『では、続いて…石田三成殿。』
三成が、広間に入る。
『あさひ姫、姫の努力を私は知っております。慣れ無い字の読み書き、生け花、お料理、針子。
少しお転婆も過ぎますが…
私は、姫の絶ゆまぬ努力が信長様の隣にお座りに慣れるような今のお姿を作っていると思います。
秀吉様もお話ししていましたが、私もあさひ様の向日葵のような笑顔が大好きですよ。
この安土の太陽です。皆、姫様を愛しています。
この、三成。あさひ姫様へこちらをご用意致しました。』
三成は、桜の花のあしらった漆塗りの筆入れと文入れの箱をあさひの前に並べた。
その隣には読み書きの手本書も。
「三成くん、ありがとう。また教えてね。
大切にします。」
三成は優しく微笑み、席をあとにした。
『では、続いて。伊達政宗殿。』
にやりと笑いながら、あさひの前に座る。
『姫、料理はいかがでしたか?』
「すごく、おいしかったです。政宗の料理は、いつも安心します。」
『そのお言葉、有り難き幸せ。
あさひ、弱いくせに、自分より弱いものを守ろうとし、その小さな体の中に強い信念を持つお前。
そんな女、奥州も安土も、この日ノ本探しても見付からないよ。俺の側に起きたいくらい、俺もお前を愛してる。
でも、信長様のお側が似合ってる事も納得がいくんだ。
だから、俺はお前の好きなものや故郷に似せた料理でお前の心を埋めて、温めてやる。
信長様と笑い会えるように、支えてやるよ。
泣くな、あさひ。みんながお前の笑った顔が好きなんだから。
この政宗、贈り物としてこちらをご用意致しました。』
懐から出されたのは、藍色に染まった綺麗な花柄の布に包まれた鶴の簪。
鶴の尾の部分には、六色の硝子玉が鎖のようにあしらわれている。
赤、緑、紫、黄、青、白。
『こちらは、我が奥州の職人に作らせた日ノ本にただ一つの品。鶴はあさひ姫、そして必ず我らがお側にいるという誓いの品でございます。』
「政宗…、すごい。素敵。ありがとう。」
また、にやりと笑いながら一礼し広間をあとにした。