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暁の契りと桃色の在り処 ー紅ー

第15章 夢の始まり


『今宵は、姫様でございます。後程、光秀と家康がお迎えにあがります。暫しお待ちを。』

膝を立て頭を下げる。

「え、何?変だよ。やめてよー。」

『あさひ姫、お支度を。』

そういうと、秀吉はあさひの手を取り、甲にふわっと口付けた。

呆然としながら、どんどん顔が赤らむあさひをからかうように笑い、秀吉は広間へ向かった。

(これからどうなるの?)

不安よりも期待で、鼓動が早くなる。

「お支度を…か。着物と髪、化粧、やり直そう。なんか普通の宴じゃないのかも…。」

あさひは、ごそごそと準備を始めた。


※※※※※


『あさひ姫。』

家康の声がした。
ゆっくり戸を開くと、黄色と白の華やかな二色の羽織が目に飛び込んだ。

『姫、お迎えにあがりました。』

『姫、転ばぬようにお手を。』

光秀がにやりと笑いながら、膝を立て手を伸ばす。

「なんか調子狂う…。」

『はぁ。…姫。お早く。』

「あの、この着物とかで大丈夫?」

『何を着ても、姫は愛らしい。』

『…さぁ、姫。参りますよ。』

家康があさひの背中を押し、光秀が手を引く。

あさひは広間へ向かっていった。

『信長様、姫がご到着されました。』

『お通ししろ。』

広間の襖が一斉に開く。

すると、下座で頭を下げて待つ側女中、針子仲間や台所番など城の中の知った者達がいた。

「え?みんな…」

『さぁ、姫様。こちらへ。』

案内されたのは、信長の座る上座から一段下がった場所。広間の隅々まで見渡せるような場所だった。

「え、ここ?」

『今宵は、姫が楽しむ宴だ。ゆっくりといたせ。』

「は、はい。」

『では、信長さま、宜しいでしょうか?』

『始めよ。』

パン!と秀吉が両手を合わせると、広間に静寂が訪れる。

『これより、あさひ姫の快気祝いと城に入らして一年の祝いの宴を行う。』

『お料理をお運びしてください。』

紫の羽織を着た三成が声をかけると、あさひの前に膳が並べられていく。
その膳を挟むように、蒼い羽織の政宗が座り頭を下げた。

『今宵は、あさひ姫様のために好物を揃え贅を尽くさせていただきました。』

炊き込み御飯、根菜の煮物、だし巻き、吸い物、焼き魚。そして、揚げ芋…。

『姫様のお好きな甘味は、また後に。』
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