第14章 雨上がりの夕陽
あさひの体調は、精神的な安定が影響し日に日によくなっていった。
政宗の用意した食事もしっかりと食べられるようになり、時間を決めてだが、着物の仕立ても出来るようになった。
しかし武将達は皆、あのあさひの突拍子もない姿を見ているせいもあり、代わる代わるに部屋を訪れては、安心した様子で頬や頭を撫で、あさひの存在を確かめた。
「もう大丈夫。なにもしないよ。」
『信じられない。』
「家康の言うこと、ちゃんと聞くから。」
『あんたのあんな冷たい目、忘れないよ。』
「だから、ごめんって。…意地悪。」
『あさひ、きなこ餅作ったぞ。』
「わぁ、ありがとう。政宗。」
『あぁ。そうだ、お前から習ったあの料理。次の宴で出すからな。俺なりに手も加えた。』
「楽しみ!今日の料理も美味しかった。」
『あさひ、寝てろ。無理したらまた倒れるから。』
「大丈夫、秀吉さん。少しなら平気。」
『お転婆お姫様。今日は出掛けないのか?』
『光秀、からかうな。あさひ、もうやめろよ。』
「はーい。」
『あさひ様の笑顔、やっぱり素敵です。』
「三成くんには負けるよ。」
日々の穏やかな日常が戻ってくる。
あさひの手元には、愛してやまない信長と揃いの小袖が出来上がっていた。
(こんな日常がいとおしくて堪らない。
手放すなんて、やっぱり無理なんだ。
皆が私の居場所を作ってくれた。
だから、私も此処で生きる。)
あさひがゆっくりと刺繍を撫でる。
正室なんて…、急に言われると恥ずかしいけど。
貴方の隣を一緒に歩けたら、何もいらない。)
小袖の金と銀の刺繍が、訪れる未来をあらわすように、キラキラと輝いていた。