第13章 桃色の涙
それから、すぐに政宗が白湯を持ってきてくれた。
信長様が抱き起こしてくれて、一口飲んだ。
『むせないね。大丈夫。脈もしっかりしてるし、熱も下がったね。喉とか胸の音とかも大丈夫そうだ。』
『家康、休め。』
『はい、すいません。そうさせてもらいます。
何かあったらすぐ隣にいますから呼んでください。』
家康は、珍しく三成くんの肩を掴んで、屏風の裏に行った。すぐに寝息が聞こえて、そしたら他の皆が微笑むから、私も可笑しくなった。
「ふふふっ。」
『あさひ!』
信長様も皆も急に大声を出したから、寝入ったばかりの家康まで起きちゃって。
『どうしたの?何かあったの?』
『あさひが笑ったんだ。』
『そう、良かった。じゃあ寝ます。』
家康と目が合って、そしたら家康は私に笑いかけてくれた。
『あさひ。大丈夫か?』
信長様の声に頷いた。
そしたら強い力で抱き寄せられた。
『馬鹿者。どれだけ心配したと思ってるんだ。貴様の心ノ臓は、命は、俺のものだと話しただろう。』
「ごめ…、さい。」
白湯を飲んだからか、少しだけ声が出てきた。
そしたら、他の皆がそれに安心したのか、ふぅ。と息を吐いた。
『あさひ、今一度言う。お前の全てを俺に寄越せ。俺は、お前しかいらない。大名からの婚姻の申し出は、お前がいるからと、断った。
お前は、俺の側から離れてはならぬ。』
「え?」
『俺は、お前を喜ばせようと画策したのだ。そうしたら、知らぬ間に、余計な噂が流れ初めて、お前を孤独にしてしまった。
安土に独りぼっちなどではない。俺も皆もいる。
お前の在り処は、この安土だ。』
「じゃあ…、え?、私は、?」
『早く言えば良かったのだ。俺のせいだ。』
「のぶ、なが、さま…」
『あぁ、愛している。』
信長様は、またきつく抱き締めてくれた。
皆がいるのに、恥ずかしいよ。
でも、良かった。信長様の側にいられるってわかったから。独りぼっちじゃ、なかった。
そしたら、涙が溢れて、かすれた声が漏れて、皆がいるのに泣き続けてしまった。