第13章 桃色の涙
どのくらい眠っていたのかな。
消えて泡になろうとして、川に入って。
そして、幻の…信長様が来て。
うっすらと目を開けると、見慣れた天井があった。
ゆっくり周りを見回すと大好きな皆と愛する人の姿があった。
手、繋いでる…。
恋しかった信長様の暖かい温もりが、私を暖めていくのがわかった。
私、生きてるんだ。
重たい体を動かして、信長様の手を握り返した。
『あさひ!!』
信長様が私を呼んだ。
「はい。」と返事はしたかったけど声が掠れて余り出なかった。
『あさひ?! わかる?こっち向いて!』
家康…どうしたの?大声出して。
あぁ、そっか。ずっと付いててくれたのね。
ごめんね。ありがとう。
私はゆっくり家康の方に向いたけど、やっぱりあんまり体が動かなくて、少しだけ笑うしかできなかった。
『きっとまだ動けないよ。もう、無理しすぎなんだからさぁ…。何日寝てたと思ってんの…?』
バタン!
そう言って、家康が背中から倒れた。
その音を聞いて、廊下から走ってくる音がした。
『どうしたんだ?!』
『あさひが… 起きました。』
秀吉さんと政宗だった。
『あさひ、あさひ! 御館様、良かったですね!みんな待ってたんだぞ? 目が覚めて…良かった。』
ふぅー、と秀吉さんはその場に座り込んだ。
『家康、あさひに白湯持ってきていいか?』
『はい、お願いします。』
『焦らせやがって。…良かった。』
そう言って政宗は、私の頭を撫でた。
『あさひ。』
珍しく優しい光秀さんの声がした。
『お転婆な姫が目覚めたと、春日山に伝えます。』
『頼む。』
信長様が応えた。
春日山?謙信様? なんだろう?
『あさひ様…。』
三成くん。三成くんも心配してくれたの?
ありがとう。
『三成、俺、もう動けないから起こして。』
『家康様、休んでください。』
『あさひの診察したら、隣の褥で寝るよ。』
『約束ですよ?』
あぁ、みんないるんだ。
何にも変わらず、みんな側にいてくれたんだ。
ゆっくり信長様の方を向く。
そうしたら、信長様は皆がいるのに、そっと口付けしてくれた。
素直に嬉しくて、嬉しくて、
…涙が出た。