第1章 穏やかな昼 五色の誓い
『純粋無垢な妹の兄は大変だな、秀吉。』
『光秀、からかうのはやめろ。』
『フッ。そうだ、あさひ。鷹狩りの森への道中に、評判がいい甘味処がある。何か買って行くといい。』
『光秀、味がわからない割によく知ってるな。あそこは俺も気に入りだ。』
「政宗も?じゃあ、買おっかな。何だかワクワクしてきた。」
『あさひ様、一緒に選びましょうね。』
そう三成が言うと、秀吉、家康、政宗が声を揃える。
『みんなで、だ!』
「楽しみだね、新しい髪飾り付けようかな。」
昼下がりの穏やかな陽射しが、あさひの眩しいくらいの笑顔を、より一層輝かせる。
『では、明朝に集合だ。遅れるな。』
『はっ。』
一斉に頭を下げる武将達は、鷹狩り本来の目的よりも明日のあさひとの1日を思い、胸を踊らせながら仕事へ戻る。
あさひも針り子部屋に戻る為に立ち上がった。
『あさひ、仕事はいつ終わるのだ?』
上座から声がかかる。
「あと少し仕立てたら一段落つくので、時間はかからないかと…」
『そうか。
では、茶をたてる。天守に来い。
そのまま今日は、外には出さぬ。』
「はい、わかりました。」
クスッと照れて笑う姿。
それは、先ほどの広間で笑う娘とは違い、一人の女としての色香を纏う。
先に出た武将達も、それは手に取るようにわかった。
所詮、勝てぬ戦。
ならばせめて
忠義を尽くす主の隣で笑うお前を
命尽きるまで
精一杯
世話を焼いて
愛でて
からかい
甘やかす。
二人の未来を遮るものは、何だろうと許さない。
光になって
影になって
この身を盾にしてでも御守りしよう。
五色の羽織が翻る。
一瞬、混じる五つの視線が、
互いに誓いを確認するのだった。