第12章 泡と幻
馬を走らせ、光秀の忍びの後を追う。
頭に浮かぶのはあさひの顔だった。
なぜ川に居る?
何を考えているのだ?
お前の心ノ臓は、命は俺のものだと、話した筈だろう。
孤独にしてしまったのか?
俺のせいだな。
どうしたらいい?
『あの川です!』
小川が見えた。
そして、川の中で見慣れた着物が風で揺らぐのが見えた。
戦場でも味わうことのない寒気がした。
気付けば、忍びを追い越し、馬から飛び降り川に入っていた。
川の温度は思ったよりも冷たくて、勢いもある。
どれだけあさひは此処にいるのだろう?
川の温度で脚の感覚が無くなれば、あの小さな体など、すぐに流される。
早く抱き締めなければ。
この胸に抱き寄せなければ。
泡のように無くなってしまう。
戦ならなんだってわかる。予見できる。
なのに何故なんだ。
あさひ、貴様は予測がつかない。
俺は貴様に振り回されるのだ。
なのに
俺は貴様を手放せない
そのくらい、俺は貴様に
堕ちているのだ。