• テキストサイズ

暁の契りと桃色の在り処 ー紅ー

第11章 壊れた歯車


どしゃ降りの雨は、止む気配がない。
雨に濡れた着物は、あさひの肌にぴったりと張り付き体の体温を奪っていく。
あさひの唇は青白く、カタカタと震えている。
倒れたあさひの体を抱き寄せると家康は、秀吉に叫ぶように声をかけた。

『俺、御殿から薬箱持ってきます!
秀吉さん、お願いします。』

『あぁ。』

家康から受け取ったあさひの体を抱き寄せ、城門へ秀吉は急いだ。
すると、城門から信長が歩き出してくる。

『御館様…。』

『秀吉、城を頼む。』

『はっ。』

信長にあさひを任せ、城門を潜ると、
秀吉は大声であさひの部屋の準備や武将達の湯殿、食事の準備を指示し始める。

『こんなに濡れて、何処へ行っていた?
何があったのだ…、貴様に何かあれば俺は…』

信長は、あさひをしっかりと抱き寄せ、足早に城門を潜りあさひの部屋に向かった。
そして、それに三成と光秀も続いていた。

『光秀さん!光秀さん!』

背後からかすかに声が聞こえた。

『…誰だ?』

『俺です。』

『佐助か? なぜ、お前がまだここに?』

『あさひさんは、無事ですか?』

『何故、それを? 貴様何か知っているな。』

『だから戻ったんです。あさひさんをここまで連れてきたのは俺です。』

『…ここでは不味い。俺の御殿に迎い入れる。
話を聞こう。』

光秀は、スッと雨の中にに姿を消した。


※※※※※


あさひは、自室に運ばれ着替えを済ませ眠っていた。肩で呼吸をし、時折眉間にシワを寄せ「うっ…」と声を漏らす。
あさひを挟んで信長と家康が座っており、信長は、ただあさひの手を握り目を閉じていた。

『かなり熱が高いです。
雨にかなりあたっていたのか、体力も落ちているようです。』

部屋の側には、秀吉と三成、政宗も集まりあさひを見守っていた。

『あさひは、結局、何処に行っていたんだ?』

政宗の声に三成が続ける。

『反物屋でした。』

『それで?』

『反物屋の主人から話を聞くと、やはり城下のあの噂を聞いたようです。そして顔色ひとつ変えず立ち去ったと。』

『何処まで聞いたの?』

『あらかた全てだそうです。』

『はぁ。』

秀吉と家康がため息をついた。







/ 76ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp