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暁の契りと桃色の在り処 ー紅ー

第7章 七色の企てと違和感 ー青と黄ー


『面白いな。よし、作ってみよう!』

「え?今?」

『あぁ、今芋を持ってくる。教えてくれ。』

※※※※※

暫くして、城の台所から天麩羅の様な香ばしい匂いがした。

『へぇ、揚げたては旨いな。』

「塩を振っても美味しいよ。」

『七味は?』

振り返ると家康が台所の戸口に寄りかかり、こちらを見ていた。

『政宗さんを探してたんです。部屋に居ないから台所に来たら… 何かの実験?』

『あさひの時代の料理教わってたんだ。素揚げの芋だ。旨いぞ。』

『いただきます。』

ほくほくした食感に、天の邪鬼の家康の頬がうっすら緩んだ。

「七味かけても美味しいよ。」

『へぇ。』

そういうと、袖口から小瓶を取り出し小皿にのせた揚げ芋に向かって無心に七味をかけだした。

「かけすぎ…」

『これが旨いの。』

「お腹痛くならない?」

『家康は、いつもこんな感じだ。』

笑いながら政宗は、もうひとつ揚げ芋を口に運んだ。


『ところで、あさひ。薬草茶飲んだ?』

先日の鷹狩りで行った丘で集めた薬草で、肌の調子を整える茶を作ってくれていた。

「あれ、スゴいね。肌荒れ良くなったよ。
ありがとう!」

『無くなる前に、また言って。』

『お前、役得だな。』

そういうと、政宗は少しだけ冷めた揚げ芋をあさひの口に運ぶ。
飲み込んだあと、意を決してあさひ尋ねてみることにした。

「なんか、みんな慌ただしいけど、何かあるの?」

『え?』

二人が目を見開いた。

「この前、秀吉さんと三成くんに会ったら何かの準備みたいなのしてて、いつもと違ったの。何でもないって言ってたけど、その後から二人が城で仕事してる様子ないし。」

(あいつら…)

二人は視線を泳がせた。

「政宗だって、急に料理の勉強って…。もう上手じゃない。」

『…何でもないって。気にしすぎだろ?』

『いつもより慌ただしいのは、新しい傘下の国から献上品が届いてるだけ。なにも変わらないよ。』

「そうなの、かな…」

『何かあれば軍議で言うだろ?』

「うん。」

(なんか、はぐらかされた?)

腑に落ちない気持ちで視線を落としたあさひの頭をを、政宗がそっと撫でた。

『心配するな。』




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