第6章 七色の企てと違和感 ー緑と紫ー
「急に言われてもなぁ。」
『では、このきなこ餅を食べ終わったら、小物屋や呉服屋に行ってみましょう。反物屋も寄りましょう。』
『そうだな。今日は散歩だ。ゆっくり品定めでもしすればいい。』
「うん!」
あさひはきなこ餅を頬張り、二人は茶をすすった。
「可愛い簪!」
「これも、すごく細かい飾り」
甘味屋の後に寄った小物屋、キラキラした髪飾りが沢山並べられている。
『どんなのが好きだ?』
「そうだなぁ。派手なのも好きだけど繊細なのもいいよね。」
『あさひ様、秀吉様。すみません、あの古本屋に行っても宜しいですか?』
『あぁ、いいけど、お前の散歩じゃないんだぞ?』
「ふふふ、三成くんの好きな本は何?」
古本屋へ二人が向かう。
『あ、おい。まぁいいか。』
「あ、これ前に教えてくれた本だよね? 三成くん?
み、三成くん…」
『はぁ、没頭し出したな。おい、三成!』
『あ、はい。すみません!
あさひ様、なんでしょう?』
「何でもないよ。大丈夫。…あ、文字の練習の手本になるようなものあるかなぁ?」
『…手本。ここは、古本ですからね。』
「無かったらいいの。」
『私が贔屓にしてる本屋に聞いておきましょう。
探してみます。』
「うん、ありがとう。」
太陽よりも眩しい笑顔であさひが頷く。
『そうやって笑うあさひ様が好きですよ。』
エンジェルスマイルで三成が言うとあさひは頬を染めた。
『あさひ、こい、呉服屋あるぞー。』
『行きましょう。』
三成が自然にあさひの手を取り歩き出した。
『おい、勝手に何、手を繋いでるんだ…。
あさひ、お前は何色が好きなんだ?』
「うーん、はっきりした色かな。ビタミンカラー。」
『ビタ、ミ、…?』
「あ、元気の出るような色ってこと。この橙色とか茜色とか。」
『へぇ。これはどうだ?』
秀吉は若草色の小袖を指差した。
『あさひ? 聞こえてないのか?』
秀吉があさひの手元を覗く。
そこには、茜色や橙色、桃色に金と銀の組み紐が重なり、桜の花が飾られた帯紐があった。
『気に入ったか? それ。』
「あ、うん。でも私にはまだ早いような。」
『え?』