第6章 七色の企てと違和感 ー緑と紫ー
「帯紐はそれに負けない帯も着物も必要で。
でも私、そんなの持ってないし、まだ着れるような大人にはなれてないから。」
『そんなことないって。あさひは信長様が認めた女だろ? 大丈夫だ。』
「ありがとう。でも、私が納得出来ないと
この帯紐に失礼だよ。」
スッと、それを棚に戻してあさひは振り返る。
「ありがとう、楽しかった!」
『じゃあ、戻るか。』
「うん。」
『その前に。あさひ様、反物屋も寄りますよ?』
「あ、そうだった! ちょっとね見たいものがあって。」
そういうと、三人は歩き出した。
『ありがとう、持ってもらっちゃって。』
反物をひとつ買って、城へ戻る帰り道。
夕焼けが三人の影を照らす。
『何を作るんだ? こんなに買って。』
「なーいーしょ。」
『信長様の物ですか?』
えへへ、とにやけるあさひの顔が夕日に溶け込むように美しい。
『また俺達のも頼むよ。』
「うん、勿論。」
そういうと、あさひは二人の間に入り、片方ずつ手を繋いだ。
『お、おい!』
『嬉しいです。』
照れる秀吉、素直に喜ぶ三成。
対照的な二人の顔を覗きながら、あさひは、ふふっと笑った。
「今日は、ありがとう。」
『また、散歩しような。』
『甘味屋、また行きましょう。』
三人の影はゆっくりと城へ向かって行った。