第5章 その軍議、天守にて。
『二日目は、鷹狩りで行ったあの丘に行き宴をする。』
『へぇ。』
政宗が、なるほど、と感心した。
『その宴に、春日山勢を呼ぶ。』
『は?』
二度目の静寂が天守を包む。
先程と違うのは、光秀までもが驚き、秀吉と家康、三成、政宗が眉間に皺を寄せた事。
『御館様、何を仰っているんですか?』
『休戦中とはいえ、冗談が過ぎます。』
秀吉と光秀が信長に強い口調で言う。
『はぁ、なんかもう…、帰りたい。』
家康が天を仰ぐ。
『軍神を見たら斬りたくなるな。』
『領土を敵に見られるのは…』
ギラつく政宗と、顔を歪める策士、三成。
『あの丘は城からも遠い。休戦協定もある。
そして上杉もまた、あさひに甘いからな。あさひの前で刀は抜かぬ。』
『しかし、!』
『あさひが戦嫌いなのは、あやつらも知っているはずだ。お前達と春日山勢だけだ。戦にはならん。
あさひのためだ。』
『もぉ、知りませんからね。』
『はぁ。』
『面白いことになってきたな。』
『では、お前達にこの二日間の宴、仕事を割り振る。』
信長がにやりと笑うと、一人一人名前を呼び仕事を任せ始めた。
『秀吉、三成。お前達はこの宴を取り仕切り、成功させるために知恵を尽くせ。』
『政宗、お前はあさひの好みを知り尽くしている。お前に宴の料理全てを任せる。お前の腕で、あさひを喜ばせよ。』
『家康、お前は秀吉と三成の政務を助けながらあさひがこの企てを悟らぬよう目を配れ。体調管理とか上手く繕い、あさひの回りについておれ』
『光秀、上杉の軒猿と連絡を取り宴の趣旨を伝えよ。上杉との連絡に文は使わぬ。お前が間に立て。』
『承知いたしました!』
一斉に武将達は、頭を下げた。
『あさひには悟らぬな。心せよ。』
『はっ。』
『もうひとつ、。』
信長は開いた扇子を、パン!と閉じた。