第5章 その軍議、天守にて。
『なるほど。
意中の相手を喜び驚かせる様な企て、という事ですね。』
『だから!三成、お前は御館様の説明を簡単にまとめすぎだっ。』
『よい、秀吉。皆、理解はできたか?』
『なんとなく。それで、宴はいつやるんですか?』
ため息混じりに家康が聞く。
『半月後だ。』
(意外とすぐだな…)
信長意外が同じ思いを巡らせた。
信長は間髪入れずに続ける。
『そして、記念日のさぷらいずの宴は二日行う。』
『は?二日?』
目を見開いて驚く政宗。
開いた口が塞がらない秀吉。
『一日でいいですよ、めんどくさい。』
『何かお考えがあるようで?』
光秀が探るように視線を信長にむける。
『一日目は、安土の皆で盛大に行う。お前達だけではなく針り子仲間や女中、城勤めの兵達もだ。』
うんうん、と武将達が頷く。
『あさひの記念日だからな。あさひに関わるものが集まるのが通りだ。
そして、さぷらいずに…。』
一瞬押し黙った信長を、息も出来ずに全員が見つめた。
『俺は、あさひに求婚する。』
『…え?』
一瞬の静寂の後、珍しく驚いて秀吉呟いた。
『あさひの世には、さぷらいずに、ぷろぽーずなる求婚をする事もあるそうだ。そろそろあさひを正室に迎えたいと思っていた。丁度良いだろう。』
『…』
その場にいた全員が、大切な物を取られた子供のように黙り混む。
『なんとも、驚かされる!』
光秀が笑う。
『はぁー。とうとうこの日が来たか。』
『やられた。』
うなだれる政宗と家康。
『秀吉様、だ、大丈夫ですか?』
三成に心配されるほど、呆然とする秀吉。
『…ふん。あさひが俺の正室になろうと、安土の中ではあさひは変わらん。今までと変わらず、頭を撫で、甘味を作り、からかい愛でるがよい。
ただ、夜伽は譲らんがな。』
『はぁー、負けました。』
『今のままで変わらないなら…』
納得し始める政宗と家康。
『よ、夜伽…』
うなだれる秀吉。
『秀吉様、大丈夫ですか?』
『ほっておけ、三成。兄貴としてはかなりキツいぞ。』
光秀が、また笑う。
『…。
それで、一日目は城で盛大に求婚の宴。
二日目はなんですか?』
嫌な予感がする、そう思いながら家康は信長に尋ねた。