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暁の契りと桃色の在り処 ー紅ー

第4章 桃色のひらめき


信長があさひの為に送るもの。
あさひが信長に送るもの。
沢山あっても、お揃いでの持ち物はない。

(お揃いの何かにしよう…、何がいいかな?
羽織は恥ずかしいし…。夜着は沢山あるみたいだし。
小袖、とかかな。それなら、公務で離れていても一緒にいるようで寂しくないかも。)

さっきまで悩んでいたのが嘘のように、考えが沸き上がる。

(うんうん、刺繍は金と銀の糸を探して…。市に見に行かなきゃ。高いかなぁ。。お財布、見とかなきゃ。)



『あいつ、どうしたんだ?』

百面相の様にコロコロ表情を変え、ぶつぶつと独り言を言うあさひをこっそり見つめる3つの影。
秀吉、政宗、家康だ。

『へぇ。百面相って、あーいうことを言うんだ。』

『酒飲みすぎたのか?部屋に送るか…』

『ま、声かければわかるだろ。宴も、もうすぐ終いだ。』


『あさひ、大丈夫か?』

「あ、秀吉さん。」

『こんなとこじゃ風邪引く。宴も終いだ。広間に戻ろう。』

あさひが立ち上がろうとすると

『ほら』と政宗が手を出した。

「ありがと。」

『いつからいたんだよ。手が冷てぇ。
今、鍋の残りで雑炊作ってやるから温まれ。』

そう言って、政宗は台所へ急いだ。

『じゃあ、仕方無いから俺が手を引いてあげる。』

家康が、はい。と手を伸ばす。

「大丈夫だよ。お酒もあまり飲んでないし、一人で歩けるから。」

『だーめ。あんた何もないところで転ぶの得意でしょ。』

『ま、今日は家康の言うこと聞いて、甘やかされろ。な?』

「秀吉さんまで…、。わかった。」

あさひは、照れ笑いをして、前に立つ家康の手を掴んだ。
少し歩けば、広間が見えた。

『あさひ、何をしていた?』

信長が襖にもたれて声をかける。

『姫君、酔いは覚めたか?』

いつもならからかう光秀の少し困った視線も、何処と無く今日は、あたたかい。

「大丈夫です。ご心配かけました。」

二人に声をかけた時、
ざぁ、っと夜風があさひの背中を押した。
あさひが一瞬立ち止まる。

『あさひ? どうした?』

隣を歩く秀吉が驚いたように声をかけ、家康も振り返った。

「なんか幸せで。」




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