第4章 桃色のひらめき
「よし、出来た。」
6人の武将達を思い浮かべながら、鮮やかに生けた野花がふわりと香る。
(今日の夕げは、狩りで成果で作る政宗の料理だっけ。
みんな、この花にも気づいてくれるといいな。天守にも飾りに行こう。)
生け花に使った鋏と野花を風呂敷に包み、ゆっくり立ち上がった。
思い出すのは、少し前の昼の宴。
楽しくて、戦の無い穏やかな時間が温かかった。
鷹狩りから帰ると、台所へ向かった政宗以外は、公務へと戻った。夕刻には、広間に集まる約束をして。
天守に着くと、開け放った戸から夕陽が差し込んでいた。先ほどと同じように、手慣れた手付きで花を生ける。
いつからか寝起きをするのが当たり前になった天守。
視線を動かせば、信長と共にする一組の褥。
ふふっ、と柔らかく笑いながら、薄紅の大振りな花の隣に白の小ぶりな花を生けた。
さぁー、っと夕暮れの冷たい風が髪を揺らす。
「戸、閉めなきゃ。」
ゆっくり立ち上がって、天守の戸口へと歩き出す。
眼下に広がる安土の町並み。
高いビルもなければ、車の音も聞こえない。
どこからか夕げの匂いがする。
誰かを呼び、家路を急ぐ声が聞こえる。
「もう、一年…か。」
そう呟くと、先日信長と話した宴や記念日を思い出した。
(信長様に、何か、記念に贈り物をしよう。サプライズかな。みんなにも何か用意したいな。)
昼と夜の間の茜色の空を見上げる。
愛しい人の笑う顔が見えた気がした。
※※※※※
「うーん…」
火照った体を夜風で冷ましなから、広間から少し離れた縁側に、あさひは座っていた。
広間では、政宗の作ったイノシシ料理と山菜ご飯が振る舞われ、身分に分け隔てなく宴が始まっていた。
(プレゼント、記念日…)
せっかくならば、特別なものにしようと考えても浮かばない。
信長の周りには、生活に困らないほどの物が溢れ、新しい何かなど見当もつかない。
(ペアリングとか、時計とか…。
500年先なら簡単なのに。
…あ。ペアか。。)