第4章 桃色のひらめき
『幸せ?』
「うん。鷹狩りに行って薬草探して。
みんなで甘味食べたりお花摘んだり。
普通がすごく楽しかった。戦が無いって平和だね。
みんながいて、信長様がいて…。私はみんながいるから生きていける。
この世界に来て、よかった。」
月明かりが、あさひの笑顔を照らす。
『あさひ様、私達も幸せです。』
三成がにっこりと笑う。
『雑炊出来たぞ。』
優しく笑って政宗が声をかける。
『ほら、早くおいでよ。』
家康が、もう一度手を握りしめ歩き出す。
「うん!」
月明かりに負けない輝く笑顔で広間へ向かう。
信長があさひを羽織で包んだ。
『「人を惹き付ける」か。俺たちは皆、あさひに心をさらわれたのかもな。』
『見ろ、秀吉。』
光秀が夜空を指差す。
『今宵は満月だ。月の隣に一際輝く星があるだろう。』
『あぁ。綺麗だな。』
『月は信長様。隣の星はあさひだ。』
『ふっ。光秀、上手いことを言うな。』
『月と星がいつまでも輝くように、お前は表、俺は裏。いつまでもお仕えしようじゃないか。』
『…言われるまでもない。この命も血の一滴まで二人のものだ。』
『…そうだったな。』
光秀と秀吉は、ただ夜空だけを見ていた。
互いに視線を合わさずとも想いは一緒だと、わかっていたからだ。
「秀吉さん?光秀さん?」
ひょこっと襖からあさひが顔を出す。
「雑炊、美味しいですよ?」
『あぁ、今行く。』
秀吉が先に歩き出す。
『お前も早く来い。』
振り返らずに光秀を誘う。
『あぁ、頂こう。』
光秀も広間へ向かい、何もない平和な日の宴は和やかに続くのだった。