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暁の契りと桃色の在り処 ー紅ー

第3章 花冠と蒼空の鷹狩り


六頭の馬の蹄が城へ向かって走る。

先頭を走る信長に抱えられるように、あさひが横抱きされていた。
頭には家康の作った花冠、腕には秀吉が作った花の腕輪。風呂敷一杯の野花が、ふわりと香る。
花に包まれた無垢な姫のようで、6人が見とれるほどだった。

「楽しかった!」

ニコニコして後ろを走る武将達を見ていた筈なのに静かだな、と秀吉が心配し信長の側に近寄る。

『あさひなら、寝ているぞ。』

まっすぐに見つめながら秀吉に応えた。

『疲れたか…。』

『薬草探しも、誰よりも楽しんでたしね。』

『甘味も誰よりも食べてたな。』

各々があさひと過ごした昼の時間を思い出す。


少しの沈黙のあと、走らせる馬のスピードを緩めて信長が話始めた。

『皆に、話がある。』

信長様が?話?
武将たちは驚きながら、先頭を見つめた。

『あさひが来て、もうすぐ一年になる。その宴をあさひに内密に準備して開きたい。
お前達、知恵を貸せ。』

『あさひには内密に、ですか?』

秀吉が少しだけ不安な表情で尋ねる。

『女は、何かを秘密にして驚かせてもらう「さぷらいず」なるものが好きらしい。
せっかくの一年の宴だ。あさひを驚かせて喜ばせてたい。』

『さぷ、らい、ず?』

『まぁ、いいんじゃないですか。』

『あさひ様、喜びますね!』

『想像出来るな。』

『からかう楽しみが増えたな。』


にやりと笑い、信長は馬の走るスピードを徐々にあげながら言う。

『よし、明日のあさひの針り子の時間に天守に集まれ。軍議を開く。あさひに見付からずに集まれ。』

『はっ』


花の香につつまれスヤスヤ眠るあさひ。
その額に柔らかく口付けをして、信長は帰路を、急いだ。
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