第3章 花冠と蒼空の鷹狩り
『風向きが変わったな。そろそろ戻るか。』
信長の声に、五人が頷いて立ち上がると支度を始めた。
「じゃあ、お花摘んできます!」
『花?』
「広間と天守に飾ろうと思って。すぐ戻りますから!」
あさひが丘を駆け降りて、花畑へ向かう。
『私も、ご一緒します!』
『なっ…三成が一緒にいたら花なんて探せないって。
俺も行く。』
『じゃあ、俺はあさひに花を摘むか。』
家康、三成、政宗が、あさひを追いかけた。
『おい、片付けてたんじゃないのかよ。』
『全く、呆れた奴らだ。』
秀吉と光秀が、信長の一歩手前で立ち止まる。
『あさひには、皆が甘いな。』
後ろに控える二人に向けて、信長は続けた。
『あさひは不思議な女だ。
突然現れてたと思えば、戦は嫌だと甘い事ばかりぬかして…。なのに、憎めない。味方も敵さえも関係なく心を奪う。』
『仰有る通りで、御館様。
あさひには、人を惹き付ける力が有るように思えます。』
『ひとたらしのお前が認めたか。』
フッ、とからかい混じりに光秀が秀吉がに言う。
『秀吉、光秀。貴様たちは織田軍の要。』
二人は、スッと膝をつき頭を下げた。
『俺はあさひを気に入っている。
これからも俺の有能な駒となり、あさひの守護に心血を注げ。』
『はっ。』
『仰せのままに。』
「信長さまぁー!見て!花冠!家康が作ってくれたの!」
西陽がきらきらとあさひを包む。
フッ、と信長は軽く笑い
『どれ、見せてみよ。』と
あさひの元へ歩き出した。
『光秀、あさひに会って一番変わったのは御館様じゃないか?』
『修羅場でも眼の色変えぬ、お方だったんだがな。』
『時々、あの方の纏う空気が柔らかい。あさひが変えたんだよな。』
『あの方のも人の血が流れていたのだろう。』
秀吉の肩を、ポン!と叩き光秀が信長の背を追いかけた。
『そうだな。
だが、どんなに変わられても、
この命を懸けるお方ということは、永遠に変わらない。』
秀吉もまた、賑やかな花畑に向かって走り出した。