第18章 学生編・残暑のValkyrie(幕間)
いや、だったらあんな演奏出来る訳が無い。
「零もその時、一瞬だけ様子がおかしかったと言っていた」
いや待てよぅ…姫さんなら可能だな。なんたって去年の夏、骨折してると気付かずに部活の試合出てたくらい痛みに強い…と言うより痛みに鈍いからな。
「って事は…ワタシ達が怪我させたって事?」
「え、どうしよう。俺死んだ方がいい?」
「いや、ワタシが死んだ方がいい…」
「………まぁそれも有り得ない話か。もしその時に負傷してたとしたらあんな演奏出来るハズが無い」
「お師さん意地悪せんといてあげてーな」
そう。有り得る。
予定では俺達の持ち時間の時に軽くトークを挟む予定だった。だけどアカネさんが演奏を引っ張るからトークを辞めた。てっきりテンションが上がってて集中力を切らしたくないのかと思ってたけど手が限界だったのか…でもだとするとトークを挟んで休憩…否、そんな事したら痛みで演奏が出来なくなる可能性があるから突っ走たと考えられる。
「ねえ、和音さん」
「分かってる。今、実菜未と清秋を呼び出すメールしたとこ」
※※※
何故、今、その人の名前が出てくるのか不思議でお師さんを見ると、お師さんも怪訝な表情で二人を見やる。
「あの…ちょっとええですか?」
「「?」」
「何でそこで実菜未さんの名前が出てきはるんです?」
「「!?!?!?」」
二人して口元を塞ぐ仕草をしはって顔を青くする。
「ほ、ほら!実菜未はワタシ達のプロデューサーもどきでしょ?朱音様の怪我について何か聞いてないかなーって…」
「せやったらマネージャーである姫さんの方が詳しいんちゃいます?」
NoGenderの皆さん、姫さんの事めっちゃ好きやし。
「姫様は学校行事で忙しいからね?」
「だったら当事者の藍音が普通なのでは?」
「や、やーね!あの二人は恋人よ?今頃イチャイチャラブラブちゅっちゅよ!」
※※※
"大至急、箱に来い"
そんなメールをオカマ野郎から貰って風呂上がりにも関わらず急いでライブハウスに向かう。そこそこ距離があるからお兄に送って貰って。時間的にそろそろ閉まる時間だしそんなに長話ではないと察知して近くの駐車場に待機してもらう。