第18章 学生編・残暑のValkyrie(幕間)
僕達がたまにお世話になってる、このライブハウスは基本的に週末である金曜日から日曜日と祝日しかオープンしてない…と言うのも池上先輩が趣味でやってる程度みたいだし本人は家の跡を継いでちゃんと仕事をしてるから、が理由らしい。
夏休み中は平日も開けてたりしてたが、それは学生バイトの桜音と椎名が常に居るからで…他のバイトよりかなり信頼している様子。
「はぁ…」
「辛気臭いのはよしたまえ」
「はぁ…」
「池上さん…どないしはったんやろか?」
先程から溜息ばかりで此方の気が滅入りそうになる。傍から見れば美人の憂鬱な溜息なのだろうが身内からすると鬱陶しくて仕方が無い。
「早く十月にならないかしら…?」
「十月になれば何かあるのかね?」
「いやねぇ…」
聞けば桜音が暫く学校行事が忙しくてバイトに来れないらしい。所謂、桜音不足。面倒臭いのだよ本当に。
「姫さん居なきゃメイク出来ないからライブも出来ないし…ってゆーよりどの道、今月はライブ無理なんだよな」
「今月ってゆーか…来月末までは難しいんじゃないかしら?」
「えっ…何でですか?」
「………アカネさん、手首骨折したらしいんだわ」
「「骨折!?」」
「先週のライブが終わって自宅に帰る途中に転んだとか何とか…」
転ぶ?あの人が?
体格の良い黄音とやり合うくらい運動能力に長けてるあの人が?
「それは…本当に帰る道中で起きた事なのかね?」
※※※
斎宮の言葉に和音さんと顔を見合わせる。
「体育祭のライブ後、朱音は指を切ったとかで保健室に行っただろう?」
「傷口エグ過ぎて死にそうになったよ俺」
「その後、君達は楽器の片付けをした。皆で手伝ったから終わるのは早かったと思うが朱音が戻って来るのは少し遅くなかったかい?」
「「確かに…」」
割と傷口はエグかったけど、指先三本くらいの怪我の処置ならそんなに時間はかからないハズ。
「零も心配していたのだよ。怪我は指先だけか、と」
「え、御免。イマイチ良く分からない」
そう言ってみると大袈裟に溜息を吐かれてイラッとする。
「君達、ライブ前に朱音に飛び付いてなだれ込んだだろう?」
「「…!」」
「あの時、既に痛めてたんじゃないのかね?」