第31章 学生編・中秋のAbend
「…黄音くんが先輩って事は…椎名くんは紫音くん?」
「お口はミ〇フィー」
と人差し指で口元にバッテンを作る。成程…へぇ………紫音くんの時はまだ男性的だけど素顔は割と女性的…そう言えばこの前のライブ配信の時の仮装は女装してたっけ、彼。
『いや否定しろよ』
「変に否定すると肯定してる様なもんじゃん」
「因みに僕は結構前から藍音ちゃんが下宮さんでは無いかと睨んでるんだけど、そこはどうかな?」
『残念、ハズレ』
「「!」」
『姫!』
僕の思考を否定した桜音さんは真意の見えない笑みを浮かべていた。
※※※
天祥院くんの憶測を笑顔でキッパリと否定する智桜姫ちゃんは大層な演技力を持った嘘吐き。マネージャーだからと言う立ち位置だからか本人が一番秘密に煩いと言っていたし何より確証を示さない憶測の物言いだから否定したのだろう。
『そろそろお迎えも来るしアタシ達はお暇しましょ。アタシは明日…って今日、最後の部活の大会があるし』
「あれ?夏の全国大会で引退したんじゃ無かったの?」
一同(全国…大会?)
『本業の方はね。掛け持ち先の方は大会すら出てなくて成績出してないから、このままじゃ卒業危うい』
勉強出来ればいいってだけのエリート校じゃ無かったのか。部活ですら成績を残さなければ卒業が危ういとは実にシビアな学校だな。しかも話の流れからするに掛け持ち先って事はサブでやってる様なものであろうに。
『文武両道の特進科なんかに進むからだよ。ただでさえやる事多いのに』
『だって特進科に進んどきゃ将来安泰じゃん?』
『………』
智桜姫ちゃんの言葉に物言いたそうな面構えで押黙る下宮くんはポツリと呟く。
『どうせやりたい事、全部諦めてお家の為に尽くす癖に』
『それは言いっこ無しよ』
「お家の為?結局家業継ぐの姫さん」
『いやいや勘弁して』
そもそもアタシにその資格が無いし、と肩を竦める。ふむ…何やら訳有りそうだが変に突っ込むのも良くない。
『じゃあ皆様、本日はお疲れ様でした』
『良いステージだったよ!有難う』
→To Be Continued.