第17章 学生編・残暑のfine(幕間)
「…?」
『そろそろ本題に入っては?偶然に遭遇したとは言え怪我人を強引に連行するくらいですから何かお話があるんでしょう?』
と優雅に珈琲を啜る。
頭の良い人…と言うより人をよく見てる。朔間先輩タイプかな………敵には回したくない人だ。
※※※
「昨日のライブで僕達は一歩…否、数歩は高みに近付けました」
当然だよね。結構ガチめに演奏したし。あの演奏にちゃんと乗っかってやり切ったなら高みに近付いて当然。こっちも体力と精神力を削ったんだから成果の得ないライブだったらお金ふんだくってるところ。
「時間も無かったと思うんですけど和楽器の演奏も取り入れてくれたり…全て無償で。本当に感謝してます」
『…その辺は池上様に言って頂ければ』
和楽器で合わせるのは苦労したけど、まぁ池ちゃんの力が無いとお筝の用意は出来なかったし池ちゃんなんか尺八買う羽目になったし。無駄にならない様に今後、和楽器も取り入れなきゃいけないよな。
「昨夜、奏者の皆さんにはお伝えしたのですが、また今後お力添えを頂ければと思います」
『それは………依頼次第ですかね』
「ふふ、しかしここまでして貰ってるので流石に何もしない、と言うのは此方からしても気に病みますので」
何かお礼を、と続ける。多分その話題をアタシに持ち掛けたのもNoGenderについての一切の情報が無いからだろう。一応そこら辺は個人個人で気を付けてはいるしアタシ達の情報が漏れない様に池ちゃんが徹底している。そんな中、運悪くアタシが遭遇してしまったと言う訳か。本当にツイて無い。かと言って自宅付近に病院がないし。
※※※
『お気持ちだけで充分です』
と綺麗に微笑む桜音さんに下宮さんが物言いたげな顔付きで桜音さんを見る。
『一応メンバーの管理等はしてますが正直仲良し、と言う訳では無いのでメンバーの好みは把握してません』
『んまぁ仲良くする義理も無いしねぇ…メンバー同士は仲良しだと思うけど私達はサポート側だし』
『ですので私(わたくし)達も彼等のライブには足を運ばないんですよ。皆さんはアイドルなので良くご存知でしょう?』
節度を持った距離が大切だと言う事を、と僕達を射抜く様な真っ直ぐな視線はそれ以上の介入を許さない。