第3章 学生編・終夏のOverture
『何かオカマの知人からオファーが来たらしいよ』
『はぁん?』
と未だ床に寝そべりながら悶えてるオカマを見下すと今度はお尻を踏み付ける。
「ああっ!いいっ!姫様さいっこう…」
『ウザい。喜んでないで説明して』
低いトーンで言われると我に返った様にピシッと居住まいを正して説明をする。その説明をアイスを食べながら聞き流していると姫が面倒臭そうに溜息を吐いた。
『奉仕活動か…まぁしーちゃんが良いって言うなら良いんじゃない?』
「俺より姫さんでしょ。家に居る時間が余計に減るし学校バレより家の人にバレるとマズくない?」
と珍しくご最もな事を言う頭のおかしい同級生、椎名が机から顔を上げる。
『まぁそうなんだけどねぇ…でもまぁ理由はいくらでも作れるし誤魔化す手段だっていくらでもある』
その分、皆には協力してもらうけどね、とベースを手に取って抱えると指で優しく弦を弾く。
「勿論さ。俺だって知人の協力はしたいからね。智桜姫様の協力なら喜んでさせてもらうよ」
『…急に男出すな』
「ふふふ、段取りは任せていいかしら?」
『一つ貸しね』
※※※
「うっそ…あのNoGenderをゲストに迎えるの!?」
体育祭の行事プランの提案から数日後。その噂は夏休みなんて関係無いと言わんばかりに広まっていた。知っている人は知っているし知らない人はしっかりと調べていたり。
「NoGenderって謎だらけのバンドじゃん…そんな人と知り合いなんてやっぱり生徒会長って凄い…」
素顔は勿論誰も知らない。年齢や性別すら不詳の…正直言えば怪しい。だけど某動画サイトを賑わす程の実力はあって、しかも生徒会長の知人だからと言う事で無償で引き受けてくれるそうな。
ただ放送したりカメラ等は全てNGとの事。
「謎に包まれてるだけあって厳しいね」
「ちゃんと休んでる?顔が疲れてるよ」
「うん、大丈夫」
後日、NoGenderのマネージャーみたいな人が話を聞きに来てくれるみたいなんだけど、そのマネージャーさんはどうやら私達と同じ学生みたいで九月に入ると学校が始まるから夏休み中に打ち合わせを終わらせたいとの事。だから早急にプランを立てて提出しなければならない。