第16章 学生編・初秋のConcert
「うわ、やめろアイネ!僕の指先まで痛くなる」
「指先の皮ベロンぐらいじゃ大した事ねぇって。何たってあの人、骨折しててもそれに気付かず部活の試合出るくらいの頑丈さしてんだぜ」
一同「………」
何なんだろう。この混沌とした状況は。
〆の挨拶を終えて閉演して舞台裏に戻ればNoGenderの皆は訳の分からない事をブツブツ言ってるしプロデューサーはそんなNoGenderの皆を見てオロオロしてるし。
「ねぇこれ、どう言う状況?」
「あ、皆さんお疲れ様でした。えと…朱音さんが怪我をなされていて…」
「我輩が救急箱の手配を頼んだハズじゃが?」
「何て言うか…思ってた以上に酷かったので先生が保健室へ連れて行かれました」
あぁ成程。だから何かイマイチ纏まりがなかったのか。
『うわーん!やっぱりウチも保健室行くぅ!』
「やめろ小娘。アカネサンが戻って来るまで楽器をトラックに運ぶの手伝え。お前等ほんと使えねぇんだからちったぁマシな働きしろよ」
『か弱い女の子にそんな力仕事させるの!?』
「別にか弱くはねぇだろ」
※※※
「消毒液滲みますよーっと」
『………』
「眉一つピクリとも動かさないねぇ…強い男の子だねぇ」
『………』
「おーい…おじさん無視されると悲しいぞー?」
やはり大人相手に喋るとなるといつもの調子で喋る訳にはいかないから割と言葉を選ばなきゃいけないんだけど…ってゆーか、そんなのは全然問題無いんだけど思った以上に疲弊してるから丁寧な言葉を使いながら男声出すのしんどい。
『すみません、手間掛けさせます』
「まぁ一応保健医だから俺。しかしまぁ…こんなになるまであんな凄い演奏するなんてプロだねぇ」
"普通だったら演奏止めててもおかしくない"と肩を竦める。
『あの人にはお世話になってるので』
「あの人って…池上?」
『はい』
お世話になってる人に母校の為、後輩の為って言われたら生半可な事をする訳にはいかない。
「情に厚い男前だな。だが…」
『!?』
ぐいっ、と着物の袖を捲りあげられる。
「度が過ぎると馬鹿だ。これは演奏中じゃ無いだろ?」
変色して腫れ上がった手首を咎める様に指さされる。
「今の時間だと夜間になるが即病院だな。折れてる」