第16章 学生編・初秋のConcert
『明日、自分でちゃんと病院へ行くので応急処置で済ませていただいてもいいですか?』
「おいおい…正気か?」
『過去に骨折を三日間くらい放置してた事もあるので問題はありません』
「…お前さん、本当に人間か?」
『後、皆には内密に。想像以上に素晴らしいライブで各々が満足してる中で怪我人が出た、と水を差したくないので』
「はいはい…もう少し自分の身体は大事にしろよ」
※※※
『よ~、すまん待たせた』
『あっかねぇぇえいっ!』
ある程度片付け終えた頃、ひょっこりと戻って来た朱音くんに我先にと藍音くんが飛び付く。しかしまぁ割と威力のあるタックルだと思うけど難無く受け止める朱音くんが凄い。僕よりも小さいしだいぶ華奢な気がするのに。
「大丈夫なの朱音様!結構流血してたって聞いて…」
『平気平気』
ひらひらと手を振る朱音くんの左の指先、親指と人差し指と中指が第二関節くらいまで包帯が巻かれていた。
『豆潰れて皮膚がベロベロになっただけだから。二、三日すれば普通に治る』
「マメ?お筝のマメ?ずっと弾いてたのに何で今更?」
『ブランク長いしリハの前って三回くらいしか合わせてねぇだろ?だから豆出来なかったんだけど昨日のリハで何時間も弾いてたら豆出来たんだって』
『そっか…だから今朝ペン先震えてたんだ…御免、ちゃんと気付けなくて』
「それならそうと相談してよォ!水臭いわねぇ!」
『相談したところで変わんねぇし』
大した事ねぇから、と笑う様子に佐賀美先生が小さく溜息を吐く。
「うおーい、そろそろ帰ろうぜ。俺明日普通に朝から仕事だしガキンチョ共は学校だろ?」
「ガキンチョって…一級上の社会人なだけじゃん」
「社会人と学生の一級の差は大きいのよ紫音…って事で。皆お疲れ様」
楽器運ぶの手伝ってくれて有難う、と踵を帰す池上先輩に声をかける。
「また依頼をしてもいいですか?」
そうねぇ…と考え込みながらぐるりとメンバーを見渡すとニッコリと微笑む。
「良いんじゃないかしら?まぁ最終的な決定権を持ってるのはリーダーである紫音とマネージャーである姫様だけどね」
→To Be Continued.