第16章 学生編・初秋のConcert
「はい?」
「この後Knightsが出てUNDEADが終わればトリのTrickstarで閉演じゃ。救急箱を用意しといてはくれぬか?」
「分かりました」
「それからお筝に付着した血も拭き取ってやってくれ。楽器は繊細じゃからのぅ」
絃は張り替えれば済むが、お筝は稀少な木の一部を使って作られるから安い物では無いし簡単に買い替えなどは出来ない。染みにでもなったら大変だろうし。
※※※
トリのTrickstarの演奏を終えて肩で息をしながら舞台袖に戻って来たNoGenderの皆さんは一部を除いて足取りがフラフラなくらいぐったりしていた。
「お疲れ様でした!飲み物どうぞ!」
パフォーマンスを終えた皆さんも、もう一度ステージに上がって挨拶を済ませてる間に、朔間先輩から頼まれた事を遣り遂げる為に一人平然としている朱音さんに声をかける。
「あの…!手を見せて下さい」
『手ぇ?』
「お筝に血が付いていて…もしかしたら指でも切ってるのではと…」
『ん~…あぁ、そいやぁ左手の指先ビリビリヌルヌルすんな』
と、ご自分で指先を確認すると思ってた以上に凄い事になっていたのか目をパチパチと瞬かせる。
『どうしたのアカネ゙ぇっ!?』
『豆潰れてベロベロになったみてぇだな』
「見せて下さ………っ!?さ、佐賀美先生~っ!」
とても救急箱で処置出来るレベルじゃないから佐賀美先生を呼ぶ、といつもの様に気だるげにやってくる。
「あー…こんなんで良くあんな演奏出来てたな…って言うよりあんな演奏したからこうなったんだろ?」
『………』
「おい池上!ベース君、ちょっと保健室まで連行するぞー?」
「え?保健室!?何で!?」
「エグい感じに指切ってんだわ」
「え、ちょ、待っ…」
と佐賀美先生の後を追おうとする空音さんは膝から崩れ落ちる。
「やめとけよクオンサン。俺等もうばってばて」
「いや、うん…佐賀美先生なら大丈夫だとは思うんだけど…」
それはどう言う意味だろう。
※※※
『どっ…どどど、どうしよう。あんなにベロッベロになってもう二度と楽器出来ませんってなったらどうしよう…』
「やだ止めて…そんなに酷かったの?」
『ゆゆゆ、指先真っ赤だったし皮膚がベロンって…』