第15章 学生編・初秋のGalaconcert
「へぇ…意外。仲良く戯れたりするんだ」
と凛月が興味深そうに呟いたから両腕を広げて待機する。
「………何」
「いいんじゃよ凛月!さぁお兄ちゃんの胸にドーンと飛び込んでおいで!」
「うわ、気持ち悪い。公然わいせつ」
「凛月ぅ!?何故じゃ!?何故じゃ朱音くん!我輩と朱音くんとで何が違う!?」
『いや、知らないです』
そう言いながら身体を起こして立ち上がろうと左手を付いた時、朱音くんの動きが止まる。
『っ…』
「?」
『…っ朔間さんとこは兄弟だからじゃないですか?』
"普通、男兄弟はベタつかないでしょ"と立ち上がると衣装の埃を軽くはらう。今少しだけ動きがぎこちなかった。もしやさっきので何処か痛めたか。
『取り敢えず気合い注入と言う名目で殴らせろ』
「「「待っ…」」」
-ゴッ-
一同「!?」
容赦無さそうな腹パンが三人にお見舞され三人は蹲る。今ので確定した事が一つ。紫音くんは男と言う事。もし女人ならば朱音くんは殴らないだろう…と言うより要らない心配だったか。全然元気そうである。
※※※
「そろそろね」
空音さんがそう言えば紫音くんはサングラスの位置を正して藍音くんは手櫛で前髪を整える。黄音さんは肩や指等の音を鳴らし、朱音くんは首巻きの布を掴むとマスクの中に通して鼻筋に引っ掛かけると何周か巻いてピンで固定するとマスクを外して懐に仕舞う。
『あ、その為の首巻きだったのね』
『まぁな。和装にマスクもどうかと思うし』
"ちょっと呼吸しにくいけど"と位置の微調整をする。昨日今日、と言うより昨日の長いリハーサルの時間で彼等NoGenderがどんな人間なのかは概ね理解は出来た。ただ…彼、朱音くんだけは真意を全く見せない。メンバーすら彼の事を多くは語らない。
「よっしゃ、スタンバろうか」
紫音くんがそう言うとメンバーが…あのひょうきんなキャラを作ってた池上先輩ですらの空気がガラリと変わる。
「その前にキラッキラのアイドル達に一つ」
一同「!?」
「依頼された以上、期待以上の成果を僕等は出す」
「"俺"達の演奏で更にお坊ちゃん達を輝かせてやる」
池上先輩の口調が………元に戻った。
「だが油断すんじゃねぇぞクソガキ共」