第15章 学生編・初秋のGalaconcert
『私達ものほほんとアンタ達の引き立て役になるつもりは無いから』
『プロのバンドマンじゃねぇからって高を括ってんじゃねぇぞ』
「体育祭で疲れてるから、とか僕達の知った事じゃない。ちゃんと波に乗っかってよ?そうしないと海底に沈ませるから」
「テンション振り切ってついて来いよ、"未来を担うアイドル達"」
一同「!」
「っしゃあ!!!行くぜイカレ野郎共!!!」
『『「「おう!!!」」』』
言いたい事を挑発する様に言って眩しいステージに向かう五人の背中は畏怖してしまう程に大きく感じた。
「まるで予期せぬ"自然災害"じゃのう」
池上先輩が気に入ってるだけはある、と楽しそうに喉の奥で笑うのは朔間先輩。
「"災害後"は皆で手を取り合えば元に戻す事も出来るし更なる発展を遂げる事が出来る」
「"災害中"は?」
「全力で生き延びるだけだよね」
「………その通りじゃな」
※※※
数え切れない程の観客。広いステージ。眩しいスポットライト。
かつての"俺"が何度か見て来た景色。もう二度と見れないと思ってた景色。あの時の様にもう二度と精一杯歌う事は出来ないけど…でもだからこそメンバーと巡り会えてこうして立つ事が出来た。
何かを腹の中で抱えてそうでは有るが切っ掛けをくれた天祥院には感謝をしなくてはならない。そしてこうして今一緒にステージに立ってるメンバーにも。
-しん…-
皆と出会ったのは…一年半くらい前だっけ。
あの時はチビッ子三人は本当にくそ生意気な小娘小僧だったし黄音は手の付けられないヤンキーだし。こんな風にバンドを組むとは思ってなかった。
活路を絶たれ夢や希望を失った"俺"。つまらない日常の血を血で洗い流してた黄音。報われない努力を嘆き殻に閉じこもった紫音。引っ込み思案で根暗でいつも朱音様の背に隠れてた藍音。
バラバラでそれぞれが死んだ魚の目をしていたワタシ達に光を宿したのは朱音様。
-ベェンベベン-
そんな頼もしい貴女は未だに一人だけ闇の中。ワタシ達が知りもしない領域の深くて冷たい闇の中。
でも嘘吐きな貴女は今日もまた、こうしてワタシ達を高みに近付ける。
→To Be Continued.