第11章 学生編・初秋のCode
「なぁ。今ちょっと怖い事考えてるでしょ?」
『別に?』
「………、歌詞とかは?」
『そこら辺は椎名の仕事でしょ』
「いや待って。姫さんのテスト終わるまで一人でやれっての?」
"無茶言うなよ~"と頭をガシガシと掻くと私からノートを奪って立ち上がる。
「まぁいいや。曲については今日の夜にゴトー先輩と和音さんに相談してみる。お前今日バイトだから来ないでしょ?」
『うん、宜しく~』
そう言えば最近、みか不足だな。私はあの箱のスタッフじゃないし、あまりお邪魔するのもあれだし最近はライブ準備で忙しかったし。次のValkyrieのライブはいつか後で姫にメールで聞いてみよ。
※※※
-キーンコーンカーンコーン-
-バタバタ-
-バァン-
「おい吸血鬼ヤロー!」
-し~ん…-
「???」
「あ、大神先輩。棺桶叩いても朔間先輩は出て来ませんよ」
「あぁん?」
「何か外せない大事な用事があるって授業終わったらすぐ帰られたみたいですよ」
「なんだとォ!?」
※※※
昨日、約束をしてしまったから今日もこの残暑がまだまだ残る暑い中、足早に図書館に向かう。あのやんちゃな単車を駐輪場に確認出来たから既に彼女は居るのだろう。
-カリカリ-
案の定、昨日と同じ広いソファ席で既に机に向かっていた。イヤホンを耳に指して長い睫毛を伏せながら書物を見てノートにペンを走らせる。時折、垂れ下がる髪の毛を耳にかける仕草は妙に色気がある。
そんな様子を暫し傍観していたら呆れた様に溜息を吐いてペンを置くとイヤホンを外して少し迷惑そうな顔付きで此方を見る。
『そんな所に突っ立って観察されると通報したくなるんですけど』
「辛辣な物言いじゃのぅ。傷付くわぃ」
『だったら見てないで声かけて下さいよ』
携帯からイヤホンを引き抜くと鞄に仕舞って再びペンを握ってノートに走らせる。ふぅむ…やはり優しいのは子供に対してだけみたいである。
「良かろう、姫様の望むままに」
-バキッ-
『姫、様?』
「池上先輩もそう呼んでおったであろう?」
そう呼んでみれば握ってたシャーペンを折って、如何にも嫌そうな表情をしていた。