第11章 学生編・初秋のCode
砂浜に五線譜を書いて、さざ波の音に合わせて音符を乗せる親友の小さな背中を見詰めていると、ふいに振り返る。
『ねぇ見て姫!このメロディどう?』
『~♪、♪…♪………うん、良いんじゃない?』
『ほんと?じゃあ次の新曲にこのメロディ組み込んでもらお』
そう言ってスマホを取り出すと音符を打ち込む。
-ザザン…-
-バシャッ-
『うひゃあ!?』
急に押し寄せた波飛沫にみいが吃驚して、すっ転んで水浸しになる。
『ちょっと大丈夫!?』
『やだもうびしょ濡れ~』
『あぁもう何してるの!ちょっと待って、今タオルを…』
-ぐいっ-
-ザッパーン-
※※※
-ざざん…-
「………」
「…?どうしたんだい?そんなペーソス漂う雰囲気で海なんか見て」
「…いや、人魚って本当に居るんだね。知らなかったよ」
「「「………は?人魚?」」」
※※※
『…っくしっ!あ゙~…』
「ちょっと下宮、風邪?」
"うつさないでよ"と癪に触る様な顔付きで私の目の前の席に座る椎名は持っていたノートを机の上に置く。
昨日成り行きで水遊びなんかしちゃったからなぁ…姫は大丈夫だろうか。多分今の時間テスト真っ只中だろうけど。
「昨日必要以上に俺達を説教するしゲテモノ食わせるから罰が当たったんでしょ」
『違うっての』
と悪態を付きながらノートを確認すると五線譜の上に並ぶ沢山のオタマジャクシ。
「昨夜メールで送られたメロディをサビとして譜面にしてみたんだけど…どう?イメージ的には」
『うーん…』
机を鍵盤に見立てて音をイメージしながらエア演奏をしてみる。
『もっと切ない感じが良いかな。ひと夏の恋が終わる感じ』
「ぁん?何かぽくない事言わないでよ気持ち悪い」
『…るっさいなぁ。姫の歌声はバラードにこそ生きる』
「いや、それは知ってるし寧ろ一緒に歌ってる俺が一番知ってる」
は?何この変態。私の姫を知った気で居るのめちゃくちゃウザいんだけど。いやまぁコイツだけじゃなくてオカマも脳筋パイセンもそうなんだけどさ。本当にもう大人しくただただ姫のサンドバックになっとけばいいのに。