第10章 学生編・初秋のIntroduction
赤点が70点…?平均点じゃなくて赤点が70点…噂以上にガリ勉な学校だな。
『赤点免れても80点以下だったら学校で勉強する時間が長くなるので困るんですよ…』
「………」
『成績と数字さえ良ければ基本は自由なので最低でも90点は取らなきゃバイトも出来なくなりますし』
あんなエリート学校に通ってるもんだから、てっきり何処ぞのお嬢様かと思ったが…どうやらそうでは無いらしい。
「正直このレベルは高校生じゃないから80点も取れば大したもんじゃと思うが…エリートはエリートで大変じゃの」
『他の科目は満点取れる自信があるので容易なんですけど…外国語系はどうも苦手で』
他の科目は満点…だと。他の科目も高校生レベルでは無いぞ。この嬢ちゃん頭も顔も小さいくせに一体どんな脳味噌してるんだ。
※※※
『…え、明日も教えて下さるんですか?』
「まぁ乗り掛かった船じゃしのぅ…中途半端には出来まい」
適度に柔らかい枕。甘い香り。落ち着く声。
「ん~…」
『あ、やっと起きられましたか?』
この子は確か…NoGenderのメイク担当…じゃなくてマネージャー。
そう言えば暑さで死にかけてた所を助けてもらったんだっけ。そしたら何か居心地良くて"勉強の邪魔になる"って嫌がられたけど無理矢理膝を貸してもらった…気がする。
「おはよう凛月」
「んげ!?何で兄者が此処に…」
「お主と同じじゃよ。暑さに参って涼める場所を探しておったらこの図書館に辿り着いて偶然にも凛月とマネージャー殿がおったのじゃ」
って言ってるけどこの状況は。
「君、こんな人に勉強教えて貰って大丈夫?この人留年してるんだよ?」
「いや、凛月もじゃろうて…」
『助かってますよ。これで好成績取れたら何かお礼をせねばなりませんね』
なんて微笑むから少しモヤッとした。
「ふ~ん…何勉強してるの?」
『!?』
ピタッと寄り添って覗き込めばビクリと肩を揺らす…って言うか何これ。全っ然分かんないんだけど。字はとても綺麗なのに全然読めない。エリート学校ってこんなハイレベルな勉強してるんだ…そんなエリートに勉強を教えてるお兄ちゃんってやっぱり凄………くない。
『………』
「これ、凛月。女性にそんなに引っ付いたら失礼じゃろう」