第9章 学生編・終夏のMute
我に返った様に顔を上げると出入口まで率先して歩くのついて行くと紫音と黄音も見送ると後ろを歩く。
「そう言えばさー、あのキーボードの人…アイネさんだっけ?すっごく力持ちだよね」
「思ったー!男の人を軽々担いじゃうんだもん、凄いよねー」
「あぁ、それは「「ストーップ」」むがっ!?」
何かを口にしようとした黄音の口を池上先輩と紫音が慌てて塞ぐ。
「駄目よ。これ以上は駄目!正直ワタシは別に素性知られても問題無いけど、あの二人の事は絶対喋っちゃ駄目!」
「ふがっ!?ふがっ!?」
「いやぁ悪いね皆さん。ここでちょっとだけNoGenderの小話をしよう」
と話を逸らす様に紫音がサングラスの位置を正しながら話し始める。
「正直僕達に性別は関係無いのだよ」
一同「?」
「男のくせに女みたいだったり、女のくせに男みたいだったり…そう、例えばNoGender内の力比べ。力持ちだと言われてるアイネは何番目に腕相撲が強いと思う?」
「キーボードは身体も小さいし明らかに女だろ?じゃあ五番目だろ」
「………と、思うじゃん?」
"違うんだなコレが"と指を振る。
※※※
「アイネは四番目。因みに僕が一番か弱い」
と深刻そうに俯きながらサングラスを抑える。
「君はどっち?男性?女性?」
「あ、それは君達のご想像にお任せするよ」
と肝心な事ははぐらかされる。
「そして三番目がクオン。じゃあ一番は誰だと思う?」
「それはやっぱり体格的に…」
「そう。レント、と言いたいところだがアカネさんとレント、力が拮抗してるんだよ」
一同「ええっ!?」
それはちょっと信じ難い。
確かにさっき二人でやり合ってたけど、どう見てもドラムの方が身体大きいしマッチョだし。だけどベースは…多分身長は俺とそんなに変わらない様に見えたけど凄く華奢だったイメージ。
「因みに喧嘩になれば圧倒的にアカネさんの方が強い」
「…だろうな。じゃないとあの五斗さんが素直にしてるハズが無い」
確かに眼帯マスクで素顔が一番謎だしリーゼントだしで怖そうな人ではあるけど…そんなヤバそうには見えなかった。
「つまり僕達NoGenderは男とか女とか、そう言う目で互いを見てないんだよ。寧ろ感覚的には全員男みたいな………って事で」