第7章 学生編・終夏のAudience
「わはは!確かに!」
「王さまも変わんないって………それよりもさ」
一同「?」
何かを言いかける凜月に全員が首を傾げる。
「マネージャーさんが作ってくれたノンアルコールのカクテルってどうやって作るのかな?俺おかわり欲しいんだけど」
炭酸効いてて美味しかった、とバーカウンターを覗き込む。
「普通の炭酸ジュースで我慢せい凜月」
「えー…」
※※※
「大丈夫かァ?アカネサン」
アカネさんの準備には凄く時間がかかる。最低でも一時間は。化粧自体はそうでも無いんだけど、なんたってあの立派なリーゼントヘア。あれを作るのは凄く大変だし後は衣装。あれだけ立派なモノを潰し隠すのは結構大変だとアイネから聞いている。
「クオンのせいでしょ。アカネに接待任せて時間取らせたんだから!本来ならば16時半前にクオンの準備が終わってアタシの準備は16時45分には終わってたハズなのに私の準備が終わったのは17時5分」
「それは本当に悪かったってばぁ…でも朱音様にしか任せられないんだもの」
基本は俺がボーカルだが、ちゃんとアカネさんがメインボーカルの曲もあるし、それは某動画サイトにちゃんとアップしてある。だけどライブではアカネさんに一曲一人で歌いきる体力は無い…と言うのも押し潰してるモノが肺を圧迫してて声が続かないと行った方が正しいか。
「取り敢えず出だしは演奏から入らずトークから入るか?」
「いや、今段取り変えたらライブのバランスが悪くなる」
「「そうね、私(ワタシ)もそう思う」」
とセリフが被った二人が睨み合いを始めようとするのを止めて図体の大きいレントを二人の間に持って来る。
「大丈夫だよ。アカネさんなら何とか間に合わすでしょ」
なんたってアカネさんだし。俺が知ってる人間の中で一番格好良くて男前なイケメンだからな。ちょっと…悔しいけど。
※※※
がやがやと賑わい出した会場内は既に人で溢れている。今のところマナーを守って綺麗に整列しているが所詮は立ち見。ライブが始まれば押し寄せる波のように観客席がごった返す。不思議と怪我人が出ないのは謎ではあるが。
「あ、照明落ちてきましたね」
「後五分か…」
開場して25分、開演まで後5分。段々と暗くなる照明は開演の合図。