第7章 学生編・終夏のAudience
しかしまだベースの朱音は来てないハズ、と思ってバックヤードのモニターを見ると既に四人の姿は消えていた。恐らくステージ上で待機をしているのだろう。
「間に合ったんやろか?」
「さぁね…」
-ふっ-
と完全に落とされる照明。辺りが全く確認出来なくなる程真っ暗で、しんと静まり返る場内。そして幕が上がる布の音が僅かに響く。
※※※
多分幕は上がりきった。でもまだ明かりも点かなければ演奏も始まらない。しんと静まり返った場内からは息を飲む音が聞こえる。そして………
-ベェン-
ベースのたった一音。その一音で何とも言えない空気が作り出され間を入れずスポットライトがステージを照らしたと同時に演奏が始まる。
そして下の客席に居る観客達はそれまでちゃんと整列していたのに押し寄せる波のようにステージの真下に入り乱れると激しく頭を振り出す。
「すっご…」
「はは…滅茶苦茶ロックじゃねぇか…」
「演奏のレベルが高過ぎ…」
池上先輩は流石と言うべきか高度なギターテクニックを有しつつ個性的な周りに合わせた調和の音。ドラムはパワフルかつ繊細さを兼ね揃えている。キーボードは他の奏者と比べて精度は落ちるが華がある。
そして何より凄いのはボーカルとベース。
圧倒的な歌唱力を持つボーカルと激しいロックに優艶を加えて各々の個性を殺さないベース。
一同「………」
動画で聴くよりも遥かに良音。こんなレベルでデビューしてないのは正直おかしい。多くの音楽事務所が放っておくハズが無いと行っても過言では無い。
-ジャン…-
「「「「きゃあぁぁああ!!!朱音様ーっ!!!」」」
五曲程、立て続けに演奏して曲が止まると下の客席から聞こえて来る熱狂的な歓声。
「ふぅ…いやぁ…相変わらずの人気っすねアカネさん」
『………』
「「「朱音様抱いてぇぇぇええ!!!」」」
「ほら、アカネさん」
ボーカルが返事をする様に促す。
『…全員、夢の中で抱いてやるよ』
「「「きゃあぁぁああ!!!」」」
「…とアカネさんの定番の殺し文句が決まったところで安定のメンバー紹介いってみよーか」
→To Be Continued.