第7章 学生編・終夏のAudience
編み込んだ髪の毛を数本のヘアピンで固定すると垂らしたままの左半分をアイロンで整えて、一体どのくらいかけてるか分からないくらいにヘアスプレーで固める。
ここまでの所要時間はたったの10分。そしてチラリと腕時計を確認すると手際良く片付ける。
『んじゃ、アタシは帰るわ』
一同「えっ!?」
「うん、有難う姫様」
「君はマネージャーだよね?ライブは見ないのかい?」
『私(わたくし)の学校は明日の新学期早々からテストなので』
一同「新学期早々…テスト」
流石あのエリート校と言ったところか。テストの回数も多いし一回一回のテストの成績で色々数値化され将来に関しても左右するとは噂では聞いた事があるが…まさか新学期早々からテストとは。
『では皆様ごゆっくり。是非ともNoGenderのライブ、楽しんで行って下さいね』
一同「!」
含みのある挑発的な笑みを残した。
※※※
「あれ?やっぱり帰らはりましたね」
影片の言葉にモニターを見るとバックヤードの裏口から外に出て行く桜音が見えた。
僕達がライブハウスに到着したのは16時。その頃、桜音は紫音…所謂椎名のメイクとヘアセットをしていた。その時点では既にドラムの黄音は準備し終わってて学院の面々が見えたらマネージャーとして接待に行った訳だが…
現在準備を終えてるのは三名。因みに朱音と藍音のセッティングをしている所は見た事が無い。個人でやってるのか…はたまた別の場所でやっているのか。
「後45分で開場ですね」
「モニター越しじゃないと見られないのが残念だよ」
NoGenderの音は迫力があるのにとても繊細。それを際立たせてるのがベースの朱音が時折奏でる優しい音。何よりも素晴らしいのは紫音と朱音のツーボーカル。あの二人の声の相性は凄まじい。そしてそれを生かす池上先輩のコーラス。
「あ、藍音さんや」
バックヤードの裏口から入って来る素顔不明なツートンカラーヘアの小柄な少女。桜音がライブハウスを後にして20分は経過していた。
※※※
-ヴヴッ-
「あ………なぁクオン、アイネ着いたって」
「あら本当?」
パッと顔を上げると携帯を取り出して時間を確認すると少しだけ眉根に皺を寄せて携帯を仕舞う。